ひこばえ通信
2007年1月号(第246号)

11/11 よつ葉ビル生産者交流会を開催
水産っておもしろいぞ!

 第3回目となるよつ葉ビルでの生産者交流会に(株)札幌中一の橋本さん、(株)福栄の岩田さんをお招きし、現在の水産業界の現状と問題点についてお話しいただきました。配送センターの職員をはじめ約40名の参加者がありました。福栄さんでは、水産加工場だけでなく、カニ漁船1隻とイカ釣り船4隻を所有し、漁獲から出荷まで一貫生産されています。今回は、その船と漁に関する話と主な漁場である日本海のお話。札幌中一さんからは、魚の市場流通と魚に使われる薬剤ついてのお話、そして安心安全な食べ物について、ともに語りあえる北海道の各地の生産者みなさんの紹介をしていただき、「水産」をとても身近に感じられる交流会となりました。その一部をご紹介します。(ひこばえ水産担当・池本)


地元自給率120%! 生産基地「北海道」
橋本 稔さん(札幌中一・北海道札幌市)

 流通の話から始めます。魚の流通には大きく分けて市場流通と場外流通があります。
市場流通は荷主→荷受→仲買→加工・小売→消費者という流れになります。荷主というのは自分でつくっているところ。その荷主から、大阪ですと大阪魚市場とか中央卸売市場で荷物を受けてセリにかけるのが荷受。その荷受から買えるのは仲買。大阪の市場だったら大阪の仲買しか買えません。そして仲買からスーパー・小売・加工へと流れます。市場での販売方法には、セリ以外に売り手と買い手が話し合って値段を決める相対セリ、この値段じゃなきゃ売らんという指値、他に入札・委託・買付などがあります。
 市場流通の問題点は、価格が原価と関係ないところです。決めるのは市場の人間と買いにきた人間です。つくる側に価格の決定権はない。だから、今日が千円で明日が5百円となって漁師さんが困るのです。それにものの良し悪しにも関係ありません。しかも一度買ったらクレームはつけられない。プロの集まりだから「見て買ったでしょ」でおしまい。買った側の責任なのです。
 それに対して場外流通というのは、僕らがよつば水産に売るように、生産者(産地)と流通側が直接やりとりします。こちらにも問題はあります。おおよそ漁期ごとに価格を決めるんだけれども、いいとこ1ヶ月しかない漁期のうち半分は漁がなかったということはよくあります。また、この年1回の水揚げを冷凍で1年間通用させるわけで、そのとき賞味期限とは?という問題もあります。あと、水産業界には荷主の意向を大事にする風習があるんだけれど、場外流通になると「俺は買ってるんだ」という立場でものを言う連中が出てくる。そうすると、ものを出さない、騙す、ということもでてきます。
 「札幌中一と申します。無農薬の魚をやってます」って言ったらウケるんだけれども、安全って何だろうとよく思います。薬剤には使うことによるリスクと使わないことによるリスクがあります。10年後のガンか明日の食中毒かという問題です。使用するのが悪くて、使用しないのが正義だと言ってしまっていいのか。一次産業の衰退や自給率の低さまで含めて、もう少し論議を深めたいと思っています。
 本来、食べものが安全であるのは当たり前です。けれども、賞味期限が短くて不便だと言われて硫酸塩を使う、価格を安くするために原料を落とす、落とした原料をおいしくするために調味料を使う、油も使う。これは消費者ニーズによってそうするのです。だから極端に言えば「僕らは消費者を敵にしてまでいいものをつくっていくのか」、そのあたりが今の私のテーマです。


漁船から見た「産地」、海は一体誰のもの?
岩田謙二郎さん(福栄・鳥取県境港)

 いま農林水産業を含めて第一次産業に従事する人口は、ものすごく減っています。漁師さんは全国で15、6万人になってしまいました。船員保険を持っている、19トン型以上の船の乗組員がそのくらい。一人とか二人が乗っている小さな船を合わせてもせいぜい20万人前後じゃないかと思います。農業者人口が約360万人と言われますから、比較にならないくらい少なくなっているのが現状です。
 なぜ減っているのか。30、40年前には、港町に住んでいて、高校や大学へは行くのもいやだという人は、手っ取り早く船に乗ってお金儲けをしようという時代がありました。われわれの世界では海(うみ)に対して陸(おか)と言いますが、陸は給料が安いから、船に乗ったのです。
 それがいまでは陸と海で給料は逆転、なおかつ危険を伴う命がけの仕事です。となると若者が船に乗りません。そのうえイカ釣り舟なんかは1ヶ月以上も野郎ばっかり7、8人、ずーっと海の上で、寝る時間は一日に4時間くらい、しかも休みなしという生活をするわけです。それでどんどん高齢化して、境港では漁船員の平均年齢は50歳を越えています。もちろん全国的にも高齢化は進んでいて、年金をもらいながら働いている方が3割ぐらいじゃないでしょうか。われわれも正直、船を維持するのは大変だなあと思いますけれども、継続できるように知恵を絞りながら何とかやっているという状況です。
 高齢化にくわえて漁場の減少という問題があります。日本海は広いとみなさんはお思いでしょうが、日本が操業できるところは少ないのです。ロシア海域、北朝鮮暫定水域、韓国海域、そして日韓の暫定水域がありますが、ここも7、8割がた韓国船が占めています。そして、狭い日本の海域では魚が獲れなくなってきたため、お金を払って他国の海域に入れてもらわないと生活できないのが船の実態です。
 もう一つ、よく思い違いをされておられるのが魚の鮮度についてです。船から荷揚げしたばかりの魚が新鮮だとは限りません。たとえばカニ舟は、約1週間で帰って来ますから、当然1日目に捕ったカニは鮮度が悪いのです。せっかくの機会だから申し上げておくと、よつ葉さんには最終日にとったカニだけを加工して出しています。鮮度がいいので、保存料も調味料ももちろん一切入れていません。
 それと、乗組員が先ほどお話したような生活をしながら、一生懸命捕ってきていますということを、少しでもわかっていただけたらと思います。