2006年12月号(第245号)

遠いからこそ直接のつながりを タイバナナ生産地を訪問
関西よつ葉連絡会第五回総会を開催
暮らしからの政治(30) ご存知ですか?後期高齢者医療制度
連載コラム・野良仕事のひとりごと
岩手から 生まれ変わっても、再び養蜂家になりたい
会員取材レポート/お店巡り編 菜一輪
会員のひとりごと もっとたくましくなっていく?
おたより掲示板 10/30 安部司さん講演会に参加
能勢マツタケ救出ボランティア運動体験記
こんなんしました
楽楽だより(8) 持続可能な制度より社会生活を持続可能に
11/5 いきいきごちそう祭
「うちの子のお手伝い」アンケートご協力ありがとうございました
めざせ! 半歩先〜命つむぐために〜 第3回:なぜ今、食育か
あかるい食育Z(10)、編集後記



遠いからこそ直接のつながりを
タイバナナ生産地を訪問

津田道夫(よつば農産)

 11月15日から19日まで、よつ葉が取り扱っているタイバナナの生産地、タイ南部チュンポン県を訪問する機会を持ちました。関西よつ葉連絡会の産地交流訪問団の一員として参加したもので、団長として連絡会代表の津田政己さん、和歌山の柑橘生産者の蔵本さん、会員として参加してもらったのは川西産直の武居さん一人でしたが、総勢7名のにぎやかな訪問団でした。


 タイを訪れるのは初めてで、しかもバンコクから南へ500km以上も離れた農村地域を訪れることができたのは貴重な体験となりました。第一印象は、予想以上に豊かだなあというものです。農業生産の中心は、ゴム・パームヤシ・ドリアンなどの果実で、バナナ生産は、古くから行われていたものの国内市場向けが中心だったようです。バンコクとマレーシア、シンガポールをむすぶ高速道路のような国道を時速120km近いスピードでぶっ飛ばして走ったのですが、国道の両側には果実を売る露店やレストランが並んでいたり、整然と植林されたゴムの木が広がっていたり、自然も、人々の生活も豊かさを感じさせるものでした。

協同出荷発展させた先駆者の努力痛感

 よつ葉が取り扱っているタイバナナの生産者は、チュンポン県のサウィ郡というところが中心の、小規模自作農民がつくる生産協同組合です。それまで他の作物を中心に栽培していた農民が、日本向けの無農薬栽培のバナナづくりに取り組んで、協同集荷場、選果場をつくっています。
 もともと、こうしたタイバナナの日本向け輸出を組織してきたのは、日本の生活協同組合でした。フィリピンを中心とするバナナ栽培は、大規模プランテーションでの栽培がほとんどで、無農薬バナナですら、日本の商社が輸入業務を取り仕切っているため、産地の農民との直接的なつながりを持つことは、特別な場合を除いて困難です。そこで、生産農家と直接つながりを持つことができるようなバナナの輸入を実現したいというのでタイバナナの無農薬栽培と日本向け輸出が、バナナの受け手側である日本の生協組織の協力でつくられてきたそうです。

サウィ郡の生産者のみなさん(上写真)と視察中の柑橘生産者・蔵本さん(右)と津田団長(下写真)
 現地を訪れてみて、こうした小規模農家の協同出荷を持続的に発展させてきた先駆的な人々の努力の上に、よつ葉のタイバナナの取り扱いが成り立っているのだということを痛感しました。よつ葉は「地場野菜」を中心に取り扱うことを大切に育ててきていますが、小さな農家がたくさん集まって、協同して生産・出荷を担うという仕組みを動かしていくことの困難さは身に染みて判っています。けれども、困難は承知の上で、こうした仕組みを育てていかなければ、小さな農家が生産を続けていけなくなることは、世界中の農業の現実が示すところだからです。
 いくつものバナナ圃場を案内してもらって、その姿、土、栽培方法が一つひとつ違っていることを知って、「やっぱ、農業はどこでも一緒なんや」とうれしくなったものです。行く先々の農家で温かい歓迎を受け、おいしいタイの家庭料理もごちそうになりました。皆、明るくて、女性は特に元気でよく働いていました。

受け手の私たちにできることは?

 2日目に訪れたラメー郡のバナナの集荷場では、過剰に出荷されたバナナが6t近く、現地の業者に買い叩かれて引き取られていく現場にも遭遇する機会に恵まれました。受けて側の日本が、ちょうど正月休みに入るため、受注が激減した結果だということでした。日本とタイの距離、収穫から日本の家庭に届くまでの時間の両方で、遠くて長い隔絶があるわけで、その間を、小さな生産農家の協同組合と日本の消費者の協同組合がつないでいくためには、いくつもの困難が常に横たわっているようです。けれども、一見、非効率・非合理と映るこうした試みこそが、世界の均質化、グローバリゼーションに対する有効な反撃ではないのかと思いをめぐらせながら、2日間の産地訪問を楽しんできました。


このバナナ 誰がつくったバナナかな?
HOMTON.COM
《ホムトンバナナ生産者情報検索システム》
http://www.homton.com/
このサイトにアクセスし、バナナに貼ってあるシールの番号を入力すると、生産者と産地の情報がわかります。