「よつ葉がめざす畜産ビジョン」決まる
地域とむすびついた畜産を 津田道夫(能勢農場) BSEの発生をうけて、日本でもさまざまな対策が講じられてきました。しかしそれらは、消費の回復にのみ目を向けた改革で、真の原因と言うべき経済効率至上主義の大規模畜産のあり方そのものを問い直すものではなかったように思われます。私たちは自前の農場を持ち、生産現場に直接携わり、日本の畜産の現状や問題点を熟知しているからこそ、根本的な解決の困難さもまた十分に承知しています。しかし、だからこそ私たち自身のビジョンを鮮明に掲げ、原則を見失うことなく、微力であっても畜産現場の変革へ取り組む姿勢が大切だと考え、「よつ葉がめざす畜産ビジョン」を策定しました。皆様のご意見をお持ちしています。(編集部) |
日本で初めてBSEの発症が確認されてから5年が経ちました。以来5年間で、日本の畜産がどのように変化したのか。少し俯瞰的に捉えて検証すべき時期に来ているように感じています。
政府・農水省に真相究明の姿勢なし
まず、日本におけるBSE発症の真の原因追及は、ついになされませんでした。「輸入肉骨粉説」「代用ミルク説」といろいろ論議はあったのですが、本当に原因を究明しようという姿勢が、政府・農水省になかったというのが唯一明らかな真実のようです。なぜそうだったのかという理由は、いろいろ推測する以外に私たちの知る由もないのですが、農水省の一貫した姿勢が原因究明より、結果に対する対症療法に終始してきたという点は、この5年間をトータルに見て疑うべくもないのです。「何か農水省にとって都合の悪いことが、原因追及を徹底すればあったにちがいない」そう私には感じられます。 加速する大規模化 増幅する現場のゆがみ 2番目に考えてみるべきことは、この5年間、畜産現場で進行した変革は、常に商品としての食肉をいかに消費者に再び受け入れてもらえるようにできるのかという一方通行の変革だったという点です。牛の個体識別耳標の義務化、食肉商品のトレーサビリティ表示の義務化、ト畜場でのBSE検査の全頭実施。これらの方策は、消費者の食肉商品に対する信頼回復にとって重要なものでした。ところがその結果、5年間で畜産の現場がどのように変化したのかと言えば「大規模化」の一言につきてしまうのです。
ビジョンにむかい畜産現場の変革へ よつ葉はこうした事態の流れの中で、もう一度、本来、私たちがめざすべき畜産のあり方を問い直す必要があることを痛感してきました。売るために「安全ですよ」と言うことだけですますことなく、よつ葉の畜産の現場を、どのような考え方で、どう変えていく必要があるのかを、現場で日々家畜と向き合っている人たちと一緒に考えて、可能なところから具体的に変革していかなければ、本質的な畜産のゆがみは何も変わらないと考えたからです。 |