安全より政治日程、結論ありきの米国産牛肉輸入再開
私たち自身の手で別の仕組みを 津田道夫(能勢農場) 食品安全委員会のプリオン専門調査会は10月31日、米国でのBSEの確認以降、輸入が止まっている米国産とカナダ産の牛肉の安全性について、生後20カ月以下の牛に限り危険部位を除去するなどの条件を守れば、日本の牛肉と比べて「リスクの差は非常に小さい」とする答申原案をまとめました。12月上旬には政府に答申、これを受けて政府は今年中にも輸入再開に踏み切る見通しとなりました。安全性が国産と同等かどうかについては「科学的に評価することは困難」としながらのこの結論は、とうてい納得できるものではありません。同委員会の存在意義を自ら否定するこの決定を受けて、私たちは何を学び、どう行動すべきでしょうか。畜産の現場から津田さんに提起していただきました。(編集部) |
総選挙後、大統領来日前の しかし、畜産、食肉の生産現場で働いている私たちから見れば、事態の流れは「食の安全」という本題からはまったくかけ離れた、政治の流れで動かされているとしか見えません。9月11日の総選挙における自・公の圧勝、小泉政権の絶対多数獲得が、世論の心配、反対を押さえ込んでの輸入再開への流れをつくり出したことは間違いありません。11月に予定されているブッシュ米大統領の訪日前に、日米間の懸案処理にむけた妥協が、大切な私たちの生活や安全にかかわる分野で「政治的」に進められているのです。小泉首相の「科学的見地に基づいて」という白々しい台詞は、輸入再開の条件とタイミングを考えれば、国民をまったくバカにしているとしか言いようのないものです。 大量生産システム 食へのあてはめは無理 にもかかわらず、早晩、アメリカ産牛肉の輸入は再開されてしまうでしょう。しかし、私はあきらめたり、投げやりになってしまうことはないと考えています。大切なことは、こうした政府のやり方、BSEから見えてきた世界の畜産・食肉業界の実態から何を学んで、どう私たちが行動するのかということだと思うからです。 食べ物づくりは私たち自身の協働で だから、食べ物の安全性を考えることは、今の世の中の仕組みを考えることに等しいのです。そして、おかしいと感じる仕組みとは違う別の仕組みを、私たちが身近なところから協力し、協働してつくっていくべきだと思うのです。政府や法律に頼る前に、まず、私たち自身が日々の食べ物を見直し、選び直し、食べ物を生み育てる現場に目を向けて、足を運び、一緒に食べ物をつくっていくべき時代になってしまったのです。 |