2005年5月号(第226号)

米国産牛肉輸入再開反対 押し付けはモーたくさん!
兵庫丹但酪農の牛乳取り扱い始まる 地域酪農を応援したい
暮らしからの政治(11)
野良仕事のひとりごと 拠点を作りたい
京都より 夏も近づく八十八夜…
おたより掲示板 野菜セットの大葉(その2)
会員のひとりごと 助っ人会議においでませ♪
―水産懇談会に参加して―
ぐるーぷ自己紹介 女・女西宮
共済だより 霜月日記(1)
どう恐いの? 耐性菌
新米百姓奮闘記 その(6)
海からの便り 第20回  アサリの長旅
私的快適?日記(3) 、 編集後記



米国産牛肉輸入再開反対
押し付けはモーたくさん!

――欧米型食生活見直しのきっかけに

 牛肉輸入再開を迫る米国は、経済制裁までちらつかせています。そして政府には、食の安全を最優先してこれに対応する気はなさそうです。やはり最後には自分(たち)の食は自分(たち)自身で守らなくてはなりません。マスコミは米国産牛肉を使った牛丼を「国民食」と書きたてていましたが、他国に依存する「国民食」とは何でしょうか? それとも米国に追従する日本のあり方を象徴しているから「国民食」? 食の安全と言いながら、食べ物を作らなくなってきている。食べ物を輸入に依存している。そのことを真剣に考えなければならない時期にきています。「輸入までして牛肉を大量に食べ続ける必要があるの?」という問い直しが必要です。食の欧米化がもたらしたものは生活習慣病の増加だったのですから、この際、肉食はできるだけひかえ、「どうしても食べたい!」ときにはよつ葉のお肉を少しだけ、というのがよろしいのではないでしょうか。輸入再開に反対しましょう。そして米国政府と食肉業界のシナリオに沿ったおもしろくない展開を見せる輸入再開劇を、私たち自身の「食」を見直すきっかけにしましょう。


 「あらゆるレベルで圧力をかけ続ける」と、米通商代表部はBSE発生からストップしている米国産牛肉の輸入再開を日本に迫っています。自国は日本産牛肉の輸入を停止したままで、この発言ですからびっくりします。
 そして2月にライス国務長官が来日し、早期再開を要請。3月のブッシュ―小泉電話会談でブッシュが強力にプッシュ…など圧力が強まるなかで、3月28日、BSE全頭検査体制などの国内対策見直し案を審議してきた食品安全委員会プリオン専門調査会が、ついに全頭検査の対象から生後20カ月以下の牛を除外することを決めました。
 「国内対策の見直しと、輸入再開問題とは関係ない」というのがタテマエですが、誰が信じるでしょうか。これが輸入再開に道を開くための決定であることは明らかです。12月号でお伝えしたように、すでに日米両政府は米国大統領選挙をひかえた昨年10月、20カ月以下の牛を検査なしで輸入再開することで合意しており、今回の国内対策見直しの決定で、今後は米国産牛肉の安全性の評価に移ることになります。

米国産牛肉の危険性

 よつ葉の会員さんで輸入再開を心待ちにしている人はいない、とは思いますが、米国産牛肉の危険性をおさらいしておきましょう。
 まず、BSE検査を受けているのは1%ほどにすぎません。それで1件の発生が確認されているのです。また、今でも豚や鶏には肉骨粉を与えており、交差汚染(同じラインでの飼料製造で汚染が混入)の懸念があります。特定危険部位は生後30カ月以上の牛でしか取り除いていません。その取り除き方がおざなりだとの内部告発もあります。
 「20カ月以下」といっても、月齢を判断する方法にも問題があります。飼育頭数が膨大(1億頭)でトレーサビリティが整っていないため、生産履歴から月齢がわかるのは全体の1割という推測もあります。そこで肉の成熟度で判別するという考え方がでてきました。色合いや肉質で月齢が分かるというのです。日本の全頭検査を「科学的根拠がない」と非難する国の判別法としては、なんともお粗末です。
 そのうえ、モンサント社が遺伝子組み換え技術を使って開発したrBST(ウシ成長ホルモン剤)や、飼料に添加される抗生物質を原因とする耐性菌汚染(7面に関連記事)の問題など、危険性はBSEだけにとどまりません。
 さらに、大量の水と穀物を使って生産した牛肉を、大量の化石燃料を使って長距離輸送するという、資源の浪費や環境への負荷の問題もあります。安全性の評価よりも前に「輸入してまで牛肉を大量に食べ続ける必要があるのか」と問い直してみることが、必要なのではないでしょうか。
 日経新聞が3月に行った調査では「米国産牛肉の輸入停止で困ったことがあるか」との問いに85%が「ない」と答えたそうです。同紙によると、これは日本人の「移り気なまでの順応性」によるものだそうですが、気移りせずに「いらない」と言い続けましょう。

自分でつくろう

 本紙がお手元に届く頃には、厚労・農水両省は米国産牛肉などの輸入再開条件の方針を食品安全委員会に諮問しているものと思われます。両省が開く意見交換会や一般からの意見募集に反対の声を届けましょう。食品安全委員会が政治的圧力をはねかえす答申を出すことは期待薄なので、国のお墨付きや御用メディアに振り回されずに、自分の食は自分で守りましょう。
 もし輸入が押し付けられても「米国産」と表示があれば避けられますが、加工品には原産地表示の義務がありません。レストランやファストフード店の食材やコンビニ弁当に入っていてもわかりません。やはり納得のいく食材を手に入れて、自分でつくる、家で食べる、が一番安心です。そして欧米型食生活そのものを見直すことも必要でしょう。

よつ葉の牛肉

 BSE発生後、牛肉消費が落ち込んでいたとき、よつ葉は自前の農場で育てた牛を自前の工場で加工していることが信頼され、肉類の注文が増えました。単なる消費者団体ではなく、自前の生産にこだわっていることを評価していただいたのだと思います。
 そうした信頼に応えるため、よつ葉の牛を肥育している能勢農場ではまもなく新牛舎が完成、粗飼料の国産稲ワラ化も進められています。また、先月号の「会員取材レポート」でお伝えしたとおり、飼育―加工の一貫体制ならではの独自のトレーサビリティを実現しています。『ライフ』180号からはご要望にお応えして冷蔵肉の企画も始まりました。
政治に振り回される牛肉事情を見るにつけ、自分たちでつくることの大切さを改めて思い、よつ葉が30年にわたってつくりあげてきた生産−流通−消費のつながりを会員さんとともに、さらに発展させていかなければと思います。(編集部・下村)