島根県雲南市吉田町は、9割以上が山に囲まれ、その豊富な木材と山から取れる砂鉄を活かして、日本刀の原料を作り出す日本古来の製鉄方法「たたら製鉄」が盛んに行われてきた地域です。しかし、時代は流れ「たたら製鉄」も衰退する中で、過疎化も進行してきました。これに対し、地域産業の振興と雇用の場創出で地域に活気を!という強い意志で地元住民から株主を募り、1985年に住民と行政が協力して設立されたのが「株式会社吉田ふるさと村」です。現在は農産加工品の製造販売の他、市営バスの運行業務、水道管工事業務や観光事業などの部門があり、全体で約60名の職員がおります。
農産加工品の製造では、農家さんにやる気を! 後継者育成を! という想いもあって、原材料には地元の契約農家さんが作る野菜を使用しています。一方で、自社農園での栽培も進めていて、現在では黒胡麻、白胡麻、人参、生姜、紫芋などの栽培を行なっています。そして食べものは必ず安心・安全でなければならないという考えの下、食品添加物を一切加えない商品作りを行なっております。また、住民の雇用の場創出が事業の目的でもあるので、機械の導入はほとんどせず、商品一つ一つ手作業を中心に製造しています。
今回ご紹介する「焼肉のたれ」は私たちが調味料を製造するきっかけとなった商品です。地元吉田で評判だった、農家さんの作る自家製の焼肉のたれを商品化したものです。地元で穫れた野菜がたっぷり入り、醤油ベースのあっさりとした風味で、醤油も隣町(仁多郡奥出雲町)の森田醤油さんの国産丸大豆、小麦使用のものにこだわっています。このたれでないとお肉が食べられない、という方もおられるぐらいのロングセラー商品です。
「ちまき・笹まき」は出雲地方の郷土食「笹巻き」をアレンジしたものです。旧暦の端午の節句や田植えが終わり農作業が一段落した頃に、山に生育する笹の葉でだんごを包み、午後のお茶請けに食べる風習があるのです。
奥出雲地域には、たたら製鉄の遺構や技術、ヤマタノオロチ伝説に代表される神話、由緒ある温泉、優しい自然、そしてそれを守りいきいきと暮らす人々。貴重な資源が豊富に存在します。これらの地域資源を全国の皆さまと共有することで、この地域を守り豊かにすることが私たちの使命と考えています。人口1900人程度の小さな町ですが、ふるさとのぬくもりをお届けできるよう、「ぎばんでこっさえる」ことを続けていきます。
(吉田ふるさと村 堀江 祐輔)
2018年『life』170号
ちまきの製造風景
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