山神(青森県青森市)

陸奥湾(むつわん)をご存じでしょうか? 本州最北端に位置し、西を津軽半島・東部北部を下北半島、南を夏泊半島に囲まれ、外洋から守られた穏やかな海です。豪雪地帯の青森では、八甲田山系に代表されるように、陸奥湾周辺の山々が深い雪に覆われます。春になると、それらの山々から、ミネラルたっぷりの雪解け水が陸奥湾に注がれます。それがほたての餌となる多くの植物プランクトンを発生させます。陸奥湾はまさに自然が造った最高のほたて養殖場で“宝の海”です。その宝の水でったほたては、とろけるような甘味と濃厚な旨味が特徴です。
当社の創業者、神幸徳は45年のキャリアを持つベテラン漁師でした。ところがある時、漁師仲間と訪れた東京築地市場で「陸奥湾産ほたて」を食べたところ、ほたて本来の味が失われていることに愕然としました。水揚げからの加工過程に問題があると感じ、漁師にしかわからない採れたてのおいしさを多くの人に味わってもらいたい、との思いで加工工場を立ち上げる決意をしました。もちろん、漁師仲間からは「餅は餅屋」だと反対の声が多くあがりました。ですが意思を曲げない頑固おやじは、2年後の1993年に青森県で初めての、社長が漁師であり、自分の漁船で水揚げし、自社ほたてを加工、製品化する会社を誕生させたのです。
漁師なので、ほたてのおいしさ・旬・鮮度は熟知していますが、「食べて安全なほたて」とはどうすれば良いのか、その実現のために苦労に苦労を重ねました。その想いは2代目である現代表の神武徳にも引き継がれ、“宝の海”陸奥湾のほたてを最もおいしい時期に水揚げし、その日のうちに安全に加工、製品化する一貫システムを確立させきました。漁師の誇りにかけて、陸奥湾産のほたてのおいしさは決して逃さない。その想いは製品にも、そして社長から従業員一人ひとりの心にも、しっかりと刻まれています。
私たちの代表的な商品の一つに「ほたての正直」があります。旬の時期に水揚げしたほたてを、数分の内に自社加工場に運び、滅菌海水(海中にいる細菌や微生物を除去した海水)で洗浄し、スチームします。真水でではなく、滅菌海水を使うことが、旨味を逃がさないためのこだわりです。また、スチームしたほたては、光沢がまったく違います。その後、「うろ」と呼ばれる中腸線を人の手で丁寧に取り除き、フリーザーで一粒一粒冷凍します。旬の時期のほたての本当に正直なおいしさと旨味がギュっと詰まった商品です。
青森県のほたては、“宝の海”の中で山・雪・川・海・人が育てた1歳のほたてが中心です(なので、ベビーほたてとも呼ばれています)。陸奥湾産ほたての柔らかさ、旨味を一度味わってみてください。
(山神 松本武徳)
2018年『life』440号

陸奥湾でのほたての水揚げ

ほたての稚貝。大きくなれと願い
山神
玉雫(ほたて貝柱・刺身用)
柔らかさと甘さが特徴の青森県むつ湾産帆立を厳選し、
貝柱だけを急速冷凍しました。
山神
ほたての正直(ボイルほたて)
青森むつ湾のほたてを旬の時期に水揚げ後、
スチームボイル。生でも焼いても。