山名酒造 (兵庫県丹波市)
有機栽培の先進地で、自然に寄り添った酒造りを
故郷を離れた都会での暮らしが長かった私が結局家業を継いだのは、幼い頃蔵人たちと寝起きをともにし、近所のおばさんたちと瓶洗い、瓶詰め…といったように、蔵という空間に人々が集まり酒造りにかける情念が、身体の奥底に染み付いていたからだと思います。
田舎に戻り11代目蔵元となった当時、蔵のある丹波市島はすでに全国的に名の通った有機農業の先進地でした。そんな土地柄が私の背中を押したのも事実。有機農家の友人が「お前は土を触る造り酒屋になれ」と提言してくれたことを思い出します。都市生活に見切りをつけた私は、自然な生き方を模索する仲間たちとともに、合鴨農法、EM菌、紙マルチなど新しい農法を次々と試行錯誤、夏は田んぼで汗を流し、冬は蔵仕事…。あれから20年、さまざまな出会いが生まれて「自然酒」の輪は大きく広がりました。酒米作りから酒造りまでを一貫して手がける、よつ葉オリジナル酒「ゆきげしき」もそのうちのひとつです。
近年の動きとしては、3.11の原発事故が引き金となり太陽光発電を導入するなど、環境負荷の少ない循環型の醸造を目指しています。その蔵も江戸享保元年(1716年)創業から300年以上になりました。身の回りの自然や人々を大切に、地に足をつけた丁寧な仕事で、奥丹波という山間の小さな造り酒屋だからこそ生み出せる手造りの味わいを追求していきたいと思います。
皆さまにとって新年が素晴らしい年でありますように。
(山名酒造 山名 純吾)