山口農園グループ(奈良県宇陀市)

山口農園は奈良県の北東部、宇陀市の伊那佐山という標高400〜500mの山間地にあります。美しい木々に囲まれた自然豊かな環境で昔から有機農業を行っていました。といっても私自身は、同じ奈良県でも大和郡山市出身で、農業とは全く無縁のサラリーマン家庭で育ちました。そんな私が農業で会社を立ち上げることになったのには理由があります。
妻の実家がこの山口農園で、跡取り息子の無い長女だったので、私はいわゆる“婿養子”になりました。ただし、結婚後もサラリーマン生活を続けていたのですが、ところが8年ほど経った2004年、妻の父から「農業で会社を立ち上げたいのでサラリーマンを辞めて一緒に会社を立ち上げてほしい」と相談を受けたのです。当時すでに3人の子どもがいたこともあり、妻からは「こんな安定した生活をしているのに将来の見えない農業なんかで会社をするなんてやめて!」と当然反対されました。その反対を押し切って、義父と一緒に会社を立ち上げたのは、いずれはこの土地を引き継いでいかなければならないと思っていたからです。しかしそれだけでなく、私が有機農業を始めて、現在もやり続けている理由は3つあります。それらは、これまでいろいろな事を乗り越えられてきた理念にもなっています。
1つは、安全安心な野菜を生産することで、それをたくさんの方に食べていただけるからです。サラリーマン時代には、お客さまより会社の利益になることを優先に考えていましたが、有機野菜のように自信をもって良いものを提供できる商売はすばらしいと思いました。
2つ目は、有機農業自体が地球環境を守ることになるからです。土の中の微生物が地球環境に大きな影響を与えます。その微生物を活性化させることで、将来自分の子どもが住む環境を守り、さらに地元を活性化させて社会貢献にもなると考えています。
3つ目は、3K、4Kといわれる農業で高齢化が進み、若い人でもやりたくなるような農業をしたかったからです。義父には娘2人しかいなかったということもあり、結婚前から本当の息子のように扱ってもらい、サラリーマン時代から休日は農業の手伝いをしていました。しかし当時は、農業は時間の拘束がきつく儲からないし絶対やりたくない仕事だと思っていました。だから、農業というものを変えることができたら面白いと思ったのです。そして、農業を変えるには、家族全員野球のような農業ではなく、効率化をはかるために仕事を分業化する必要であると考えました。そこで、「有限会社山口農園」として会社を立ち上げる時から、生産部や収穫部、教育部など「分業制」をとっています。
現在山口農園は、社員、パートなど全体で56名の方が毎日頑張ってくれています。農業人を育成するため「オーガニックアグリスクールNARA」も運営し、約200名の卒業生がいて、そのうち10名が「山口農園グループ」に入って有機農業を実践しています。
今後はグループの輪を広げ、有機野菜の全国産地リレーを可能にして安定供給を目指し国産自給率を上げたり、また有機野菜をただ広めるだけではなく、そもそも食への意識を高める食育活動も行っていきたいと考えています。
( 山口農園グループ 山口貴義)
2018年『life』400号

奈良・山口農園グループ
奈良の無農薬サラダ水菜
ハウスで無農薬にこだわって栽培された水菜。
やわらかくてサラダにピッタリです。
奈良・山口農園グループ
奈良の無農薬ベビーリーフ
ロメインレタス、ルッコラ、ミズナ、スイスチャードなど
手摘みしています。種類は季節によって変わります。