藤間農園(島根県出雲市)

今、農業では後継者不足は深刻な問題となっています。ここ出雲の柿農家も例外ではありません。私たちが作っている柿畑もすべて廃業された農地です。10年前に大阪からUターンしてすぐに柿農家になれたのも、このままでは耕作放棄地になってしまうという事情があったからです。現在も廃業される農家の数は増えるばかりで、そうした農家から頼まれて引き受ける畑は増えていく一方です。
そんな中で私たちも後継者を見つけるべく考えを巡らしていたところでした。この問題を一挙に解決してくれたのは、「大阪の息子さんは農業に興味はないですか? 一度話をさせてもらえませんか」というJA 職員からの一言でした。「それは無理、あり得ない」とその場は返事をしたものの、一度話だけはしてみようと思い立ち、息子に電話をしてみたのです。すると、「嫁さんが一緒に行ってもええよと言ってる。柿づくりも一緒にやる」との耳を疑う答えが返ってきました。本人がその気になっても嫁さんが嫌がるだろう、大阪で生まれ、大阪で育った息子夫婦が子どもを二人連れてきて、しかも柿づくりを始めるなどと考えてみたこともなかっただけにびっくりでした。
本気なのか正気なのか確かめるべく、翌日には大阪に行った次第です。
昨年11月に引っ越してきた一家4人。今年1月から夫婦二人は、篤農家に研修を引き受けてもらい柿園で修行の日々を送り、子どもたちは3年後には廃校となる小学校に通学。新天地で新たな人生を歩み始めました。今後7年間は行政からの支援があるので安心ですが、農業は自然が相手です。努力したことが必ず良い結果を生むとは限りません。習うことよりむしろ慣れることが重要。
とにかく、不安も期待も合わせて、見守りたいと思います。
(藤間(とうま)農園 藤間 恵子)
2018年『life』160号
元気いっぱいの藤間さん一家
冬のワンショット
藤間農園
藤間農園の干し西条柿(3個)
島根県の藤間さんが育てた西条柿を干しました。
強い甘みととろけるような食感が特長です。