夢産地とさやま開発公社(高知県高知市)

(「有機の里=自然環境型地域づくりに向かっての宣誓文」より)

夢産地とさやま開発公社は、高知市内を流れる鏡川に沿って約15kmほど北に上った源流域、旧土佐山村にあります。誕生のきっかけは、立村百年記念事業の一環で1989年に行われた「地区懇談会」でした。当時、それまでは年間1億円もの販売高をあげていたミョウガが根茎腐敗病で衰退の一途をたどっていた背景もあって、農業の将来性が危惧され、過疎や高齢化も深刻でした。それでも、今できることは農業の振興だとして、その上で行政や農協・農家が手がけにくい隙間の部分を担っていく組織が必要だということで、1992年にこの公社が設立されました。同時に、生姜・ゆず・四方竹(秋たけのこ)など高知県中山間地域の特産物を生産する特定生産法人でもあり、有機関連農産物を扱う農家野菜の流通・販路を担う経営体でもあります。
土づくりからはじまる
まずやるべきことは、化学肥料や農薬の多用で地力が減退した土を回復させ、連作障害を克服し、そして収穫量を安定させることでした。当時はミョウガ生産の衰退だけでなく農薬多用による人体への影響などが、特に生姜や柚子農家にとって深刻な問題となっていました。また農家によっては鶏糞を生のまま畑に投入することがあり、環境面の指摘の声もあり、これらの問題を解決するために「土づくりセンター」が作られました。
また、公社設立に向けての動きの中で「有機の里=自然環境型地域づくりに向かっての宣誓文」をまとめ、有機農業を基本とする農業に村ぐるみで取り組んでいます。森の奥にある透き通った沼では、自然のサイクルがうまく回っている限り、木の葉がどんなに落ちても水が汚れることはなく、沼底では木の葉が生き物を育む土へと変わっていきます。これは分解者であるバクテリア(B)と、ミネラル(M)、それを溶かしている水(W)が浄化作用を行っているからです。その自然界の浄化システムを応用したのがBMW 技術と言い、この技術を使用した堆肥を土づくりセンターで製造し、土壌改良材として畑に使用し、土佐山の野菜たちを育てています。土づくりにこだわり、安心・安全な農産物の生産振興と流通の確保に取り組んでいます。
ミョウガについて
ミョウガ栽培は、旧土佐山村では1952年から露地での栽培が始まりましたが、根茎腐敗病でほぼなくなり、30年ほど前からはハウスでの栽培となり、現在は9戸ほどの農家が栽培しています。今では土佐山を代表する作物のひとつです。

丹精込めて育てられるミョウガは、夏から秋にかけて多く出荷されます。近年、重油の高騰などあり、生産者には厳しい状態も続いていますが、よりよい物を作っていくために、勉強会なども行い、日々頑張っています。
(夢産地とさやま開発公社 大崎裕一)
2018年『life』280号

四国山地の山間に旧土佐山村はあります

夢産地とさやま開発公社の皆さん
夢産地とさやま
高知のみょうが
野趣に富んだ独特の香り、かすかな辛み、
シャキッとした歯ざわりを味噌汁や薬味でどうぞ。