但馬漁協(兵庫県美方郡)

但馬漁業協同組合は、2004年に香美町の香住漁港・柴山漁港と豊岡市の竹野漁港・津居山漁港が合併してできました。おもに沖合底びき網漁業や紅ズワイガニかご漁業、イカ釣り漁業、浅海漁業などを行っています。同じ兵庫県の日本海側に位置する但馬漁協と隣の浜坂漁協とでズワイガニ・ホタルイカ・ハタハタの水揚量は全国トップレベルを誇っています。
漁業を取り巻く厳しい環境は、但馬地域も例外ではなく、魚介類の水揚げ量、漁業就業者数は1989年より右肩下がりに減少しています。この状況を少しでも改善したいと、2016年度より漁協として本格的に加工製品の製造、6次産業化に取り組んでいます。漁獲高を誇るカニに依存するだけでなく、安価に取引される漁獲に新たな価値を創出し、未利用魚など流通に乗らない規格外の魚介の有効利用などにより持続可能な漁業を目指し、加工品の開発に力を入れています。
商品開発の先駆けとして、香住の紅ズワイガニの足取れや規格外のものを魚醤にできないかと試みました。従来の塩漬けの製法では硬い甲羅は発酵しませんでした。約5年を費やし試行錯誤の末、麹を使用することで香住ガニをまるごと発酵させることに成功しました。世界でも類を見ないカニの魚醤です。
この魚醤は、「食の安全を何よりも優先する」但馬の老舗醤油蔵=大徳醤油で造ってもらっています。紅ズワイガニだけでなく、ノドグロやホタルイカなど山陰沖で獲れた魚介に、但馬でコウノトリの野生復帰を願う農家が作る丸大豆、同じく有機農産物認証を受けた小麦、国産の天然塩を使用。伝統的な天然醸造により、四季の温度変化のなか、蔵に棲み着いた多様な酵母や微生物の活動でじっくり発酵、約1年かけて熟成させる魚醤づくりをしています。
さらに海苔や干物にも麹の魚醤で仕立てた商品を展開しています。なかでも但馬の漁港で獲れた鮮魚を干物にした「旨干し」は舌の肥えた地元の漁師さんも「旨い」という逸品で

す。但馬の海幸と山幸の天からの恵みをぜひ一度お試しくださいませ。今後も、但馬の持つ資源力、環境をブランド化し漁村の発展に貢献できる事業や取り組みを強化し、明るい未来を創造してまいります。
(但馬漁業協同組合 西賀真紀)
2019年『Life』440号

カニの水揚げ
但馬漁協
麹の魚醤「香住ガニ」
麹を使用する独自の製法で香住ガニを使った魚醤ができました。
濃厚な旨みで刺身醤油にもおすすめ。
但馬漁協
但馬の旨干し
兵庫・但馬で揚がる新鮮な魚を、その前浜で揚がる魚で
作った魚醤で味付けした干物のセット。