食彩あん(京都府南丹市)その3


京都府の地図でちょうど中間に位置する京都丹波の南丹市日吉町は、“京都府のへそ”とも呼ばれていて、変なこじつけではありますが、大体の場所をイメージするには分かりやすいかと思っています。標高約240m の山間の里で冬は凍てつきがひどく水道が凍り、夏は結構暑く、どちらかといえば厳しい自然環境です。このような山間地で食彩あんは、自家農園のハウス栽培と地元の素材を使ったジャムの製造販売を行っています。“なぜこんなところで”と言われそうですが、子どもの頃、田舎に育った私には肌に合っているようで、じっくり物造りに打ち込むにはいい環境で気に入っています。
でも、このような山間の環境では収穫できる農産物は限られることから、平安時代より品質の良い丹波栗や京丹波黒豆などに特化して、さらに洗練させて栽培が続けられてきました。そんな地域の特徴を生かして、食べるのに手間がかかるけれど、おいしい丹波栗をもっと手軽にいつでも食べられる風味豊かなジャムにしようと思い立ちました。しかし、販売しているジャム商品のなかで、思ってもみなかった程に一番苦労することになりました。
栗を割って実を出しますが、栗はもともと水分がなく、このままでは煮込めないことから水を加えます。また、そのままでは舌触りが悪いことから、餡を作る要領で細かな目合いの濾し器を使い丁寧に、栗餡を作る要領で濾します。そして、ここからが本番です。この栗餡を無添加で栗の風味を生かしたジャムをにするには、加える水加減が非常に重要になります。水分が多いと栗本来の風味が薄くなり、美味しくなりません。また、少なすぎると固くて伸びず使いづらくなります。ベストな水加減にするには、大鍋で溶岩のように弾け飛ぶ栗をひたすら掻き混ぜ、良い頃合いまで炊き上げます。この頃合いを見極めるのに何度も失敗して作り直し、非常に苦労しました。栗の風味が豊かで滑らかな舌触りを兼ね合わせたジャムは、機械ではできない手作りならでの微妙なさじ加減で作り上げています。また、ミネラル分の多い粗製糖との相性も良く、自然そのままを詰め込んだ丹波栗ジャムを是非ご賞味頂ければと思います。
昨年より新型コロナの影響を受け、この山里でも地域の祭りや行事が中止になり、人とのかかわりが薄くなっています。高齢化が激しいので、感染への警戒心は深刻な状況です。また、野菜・果樹生産者においても特に飲食店関係の業務用の農産物が停滞し行き場を失う状況が続いています。食彩あんでは可能な限り仕入れを増やし加工品を通じて、微力ながら生産者と会員さんの橋渡しを行いたいと思っています。
(食彩あん 西田貴彦)
2021年『Life』100号

西田さん夫妻
丹波栗の美味しさがつまってます
食彩あん
丹波栗ジャム
丹波栗を手むきしてペーストにし、粗糖で仕上げた贅沢な栗ジャムです。パンはもちろんアイスにかけても。
コロナ禍で行き場を失った能勢農場の苺を西田さんにジャムにしてもらいました
食彩あん
能勢で育った苺のジャム
能勢農場で育てた無農薬・露地栽培の苺、粗糖、レモン果汁で作りました。甘い苺の香りと風味が楽しめます。