食彩あん(京都府南丹市)その1
私たち食彩あんは、主力のベリー類のブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリーを自家栽培し、また地元の素材やこだわりの生産者の素材を使って、ジャムを製造しています。今回は、ベリー栽培にまつわる出来事(奮闘)について紹介します。
食彩あんは、京都府南丹市日吉町にあり、ちょうど京都府の“へそ”と言われる京丹波地方の高原の山深くにあります。周りは、山ばかりの自然に囲まれており、野性動物が多く、鹿、猪を始め、猿、熊、アライグマ、キツネ、タヌキなど、一瞬動物園かと思うほどたくさん種類がいます。都会の人からは、“自然に囲まれて環境が良いところ”と言われますが、生活する上では、なかなかこれが厄介な存在となります。私たちもこちらに来た当初はもの珍しくて、村の人たちが目の敵のように動物を追い払う事に抵抗を感じておりました。しかし、野性動物の農作物への食害は半端ではありません。一度人間が作った野菜の味を覚えると、山の木の実などに見向きもしないのです。その執念たるやすさまじい。鹿は平気で2メートルの囲いを飛び越え、隙間があれば頭で押しのけて入ってきますし、猪は囲いを牙と頭で突撃して破壊し、後には無残な大きな穴があきます。私たちがこの地を選んだのは、ベリー類は涼しい気候が適していることからで、ハウス栽培なら野性動物は大丈夫だろうと高をくくっていました。しかし昨年、扉がほんの少しだけ開いていたところを鹿が頭でこじ開けハウスに侵入、収穫時期の実がかなり食べられてしまいました。慌てて扉に金具を取り付けて開かないようにしたところ、扉の前に大量の足跡が残っていて長時間うろついていた痕跡がありました。少しでも隙間が無いか常に探しているのです。
また最近、動物被害だけでなく非常に深刻になってきているのが自然災害です。これもハウスだからといって安心できません。昨年は、豪雨によりハウス内に大量の水が排水溝から逆流し、ブルーベリーのポット(プランター)が地面からぷかぷか浮いてしまいました。これを見た時は、さすがに入口で呆然と立ち尽くしました。ブルーベリーは普通の土では栽培できませんので、1つ40リットル程の大きなポットにピートモスを使用してわざわざ土を作り、そこで苗木を育てます。それが約250個、一斉に水に浮いてぷかぷか漂っていたのです。ピートモスは、いったん水を含むと重さは1.5倍位になります。水を含んだポットを動かすにはかなりの力が必要でした。
これら野性動物や自然災害も、もとをただせば杉や檜を植林のために人が広葉樹を伐採し自然を破壊したこと、また、温暖化による環境の劇的な変化に問題があると思われます。自然に対する畏敬の念と自然の恵みへの感謝を常に忘れないことが大切だと今更ながら思います。今年の栽培と収穫が順調であることを願いつつ、これからも食彩あんは、自然の恵みの素材を大切にしていきたいと思います。
(食彩あん 西田 貴彦)
ブラックベリーに受粉する蜂
西田さん夫妻