スタジオオカムラ (高知県高知市)その2
世界最高品質をめざす土佐のベルガモット
■みかん農家の未来に向かっての挑戦
温州みかんは高知県でも昔から栽培されてきましたが、輸入果実に押されるなど、相場の下落と需要の低迷に苦しんでいます。加えて温暖化が進行する中で、栽培適地とされてきた高知県でも今後は質の高い温州みかんが栽培できなくなるという懸念が生じています。データによると年間平均気温があと0.5度上昇するとそうなると言われているのです。みかん農家の将来を考えると、代替品種の開発が望まれていました。
■爽やかな柑橘の香りを広く伝えたい…
柑橘は果皮に含まれる香りはもちろん、季節に応じて花、葉、種類によっては枝まで爽やかな香りを放ちます。摘蕾(てきらい)作業の季節の花が開花する一瞬の香りなど、農家さんたちは「皆さんに体験してもらいたい」と口を揃えて言います。そして私たちの地元春野町は清流仁淀川の流域に位置し、上流域では古くからお茶も盛んに栽培されています。この紅茶と合わせて柑橘の香りを伝えることはできないか。そんなところから、約5年前に近所の農家さんと話し合って国産アールグレイを開発することになり、原料となるベルガモットを栽培してもらうことになりました。
■農家はイタリア・カラブリア地方のベルガモットを目指す
国産ベルガモットは、約20年前に全国の果樹試験場に配布され研究が始まったと聞いています。しかし、いざ栽培しようと思って探しても実際に栽培している農家はほとんどなく、瀬戸内のごく一部で栽培されていただけでした。そこで、まず流通していた苗木を入手したりして、具体的に栽培を始めたのが約4年前。それから、数少ない栽培農家を訪れてさまざまな情報を収集し、接ぎ木となる台木を改良したり、栽培方法も工夫して、ようやく現在の品質に到達したのです。目指すは、世界最高品質といわれるイタリア・カラブリア地方のベルガモットです。
■最高品質の香りの抽出を目指す
しかし、ようやくベルガモット果実を収穫できるようになっても、当初は花や果実から思うようなエキスを抽出することができませんでした。研究を進めていたところ、約3年前に高知県内メーカーが独自開発した減圧蒸留装置との出会ったことにより最高品質の精油が可能となりました。それまでの水蒸気による抽出とは違って、沸点をコントロールすることができるので、低い沸点で爽やかな香りをより多く抽出できるようになったのです。こうして抽出された精油から生まれたのが『ベルガモットスパークリング』です。
■精油や完熟玉ピールの活用
鮮烈な香りを求めるなら未成熟な青玉ですが、完熟玉は優しい香りで味わいも異なります。イタリアやフランスでも完熟のピールを利用した商品は数種類しかないようです。そこで私たちは、国産ベルガモットの特徴をより活かした商品として、現在、完熟のピールの油胞をできるだけ残しフレッシュな状態で楽しめるコンフィチュールなどの商品を開発中で、近々皆さまにお目にかけたいと思っています。
(スタジオオカムラ 蔵田克巳)
5年の歳月をかけて育て上げたベルガモット