四宮蒲鉾店


四宮蒲鉾店がある徳島市津田という地域は、新町川、園瀬川、勝浦川の3つの川の下流にあり太平洋、紀伊水道に面した恵まれた地域で、昔からの漁師町です。私の子どもの頃には海岸の砂浜で地引網も行われていて、津田の町中だけでも20件ほどの蒲鉾屋さんがありました。
四宮熊五郎が1840年に蒲鉾を作り始めたのがスタートで今年で182年、私で5代目、現在の社長で6代目になります。私たちが添加物を使わない、昔ながらの作り方に立ち戻ったのは1989年のこと。当時は、大量生産で少しでも安価な物をという流れのなかで、合成保存料や化学調味料など、私たちもそうした食品添加物を使うようになっていました。私自身、このままではダメだと思っていたのですが、何をすれば良いのかが解らなかった。そんな時に自然食の団体より、無添加の蒲鉾を作れないかと声をかけていただいたのがきっかけとなりました。
無添加で造り始めた当初は毎週サンプル出しで、味が薄いなど失敗の連続でした。それでも砂糖と塩とみりんのみの味付けにこだわり、試行錯誤に1年かかりました。そこで、無添加と言っても、まずいのは受け入れられないことに気づきました。
その1年後、お子さんに重度のアトピーがあり食生活に大変苦労しているというお母さんが、関東より訪ねてこられました。「うちの子は化学調味料がダメで、練り物は食べたことがなかったのですが、四宮さんの練り物に出会い、初めて食べることができました」との言葉は、今でも忘れることができません。四宮蒲鉾店の基本的な経営方針は、次の3つです。
大きくしすぎない会社づくり
地元で獲れた新鮮な魚を使用し、調味料も安全なものを使用しこだわりを持って作るには大量生産はできません。大きくしない会社づくりは、こだわりぬいた蒲鉾を作るために重要な考え方です。
従業員第一主義
また、まず働く人が幸せにならなければ、食べてくださる方
に幸せを与えることはできません。縁あって四宮蒲鉾で一緒に働く仲間の幸せを第一に考えるのは、そういう理由からです。
お金を物事の考え方の基準としない
会社を継続させる、生活を営むためには、お金は必要です。しかしお金を一番に考えれば、食品偽装など間違った方向に進んでしまう恐れがあります。私たちは、お金を物事の考え方の基準とせず、ひとつの蒲鉾の美味しさが、従業員、お客さま、ひいては社会の幸せにつながっていくよう取り組んでいます。
さらに長期的な目標として、「景気超越型企業」をめざして、「蜂の巣経営」に取り組んでいきます。蜂の巣は六角形が集まり円形になっています。私たちも、経営理念を真ん中に従業員、お客さま、関わる人々が集まり円になっていきたい。円に近づくことで景気の浮き沈み、消費税などに左右されない全天候型、景気超越型企業になっていけると信じ、進んでいきます。
(四宮蒲鉾店 的石勝美)

的石勝美さん
四宮蒲鉾店
金時ちぎり揚げ
阿波の海の幸と北海道産スケトウダラで作った練り物。鳴門金時を練り込んでいます。
四宮蒲鉾店
こんまい天ぷら きくらげ
阿波の海の幸と北海道産スケトウダラで作ったすり身に、きくらげを練りこんで仕上げた天ぷら。