しまなみ耕作会(広島県尾道市)


しまなみ耕作会がある広島県尾道市瀬戸田町は、尾道(広島県)と今治(愛媛県)を結ぶしまなみ海道の中間地点に位置し、サイクリストの聖地として観光客も多くなってきた地域です。そして、広島レモンのなかでも「瀬戸田レモン」とブランド化されているレモンの島です。
私たちは、レモンの島と言われるようになっても、相変わらず昔ながらのみかんやネーブル、八朔や甘夏なども大切に栽培し続けています。ご当地ブランドによって農家の収入が上がることは喜ばしいことです。しかし、単価が高いからレモンに絞って栽培することは経営的には間違っていないかもしれませんが、農家としてはまったくもって面白くない。ここ尾道は八朔発祥の地であり、雨も少ないので糖度の高いおいしいみかんができる柑橘栽培適地です。秋から春までさまざまな品種を収穫し、季節の移ろいを感じながら農作業をして、食べてくれる人に旬を感じていただく。そして感想を聞いて嗜好を読み取るなど、食べてくれる人を想いながら箱詰めをする。それがやりがいでもあり、農協などの組織に属さず有機栽培をしている私たちの醍醐味でもあります。会員の皆さんからの感想やクレームをいただいて、喜んだり、反省したりと、人と人とのつながりを実感しながら栽培することができています。
この春より、新型コロナウイルスの影響で社会が激変しました。私たちも学校給食がキャンセルになったり、飲食店が自粛により閉店してしまったり、突然レモンや八朔が全然売れない状況になってしまいました。3月や4月は送別会、歓迎会と飲食店ではレモンサワーになって一番売れる時期なので、あらかじめ大量にレモンを収穫しており、貯蔵庫でジワジワと腐りが出てくるのをただただ見つめるしかない状況でした。加工業者さんに相談するも、すでに行き先を失った柑橘が加工場へと集中してあふれ返っていて、受け取りを断られてしまいました。そんな時、よつ葉の担当者の人から電話があり、「コロナの影響で大変ですよね! レモン余りそうなんですか? マーマレードにしましょう!」とトントン拍子に話が進み、同じよつ葉の生産者の「食彩あん」さんがすぐに試作品を作ってくださって、新商品ができあがりました。モノとカネのやり取りだけでなく人と人が気にかけあって、支え合ってできた商品です。化学合成農薬・化学肥料不使用の安心・安全なマーマレードをどうぞよろしくお願いします。
(しまなみ耕作会 能勢賢太郎)
2020年『Life』250号

能勢賢太郎さん、レモン畑にて

能勢さん一家
食彩あん
レモンマーマレード
しまなみ耕作会の能勢さんたちが作った、
化学合成農薬・化学肥料不使用のレモンと
粗製糖で作りました。レモンの爽やかな酸味が楽しめます。