江戸時代初期にあたる寛永元年(1624年)、高橋家の初代清右衛門は筑後国久留米藩の港町大川・榎津(現福岡県大川市)に移り住み、二代四郎兵衛が造り酒屋を興しました。筑後川の水に恵まれ、豊かな大地を持つ筑後国は米どころ、米どころは美酒の産地、酢は酒の発酵から生まれるもの。その自然な流れに沿うように、四代清右衛門が宝永8年(1711年)酢商売を始めました。
これが私たち庄分酢の始まりで、以来300年、福岡県大川市榎津で昔ながらの伝統的な製法(静置発酵)を守り、コクのあるまろやかな酸味のお酢をじっくり造り続けています。現在では科学技術の発達により、もっと効率的な醸造方法も出てきました、私たちは昔ながらの日本の文化であるこの発酵文化を残していくことが大切だと感じています。
私たちは、「300年の歴史を受け継ぎ、伝統製法の醸造酢を礎に、製品や事業を通じて食生活・食文化に貢献する」を経営理念として今に受け継いでいます。その中で私たちが大事にしてきた考え方のひとつが、原料生産者の方たちとの関係性です。例えば、玄米酢に使う原料は、全て熊本県山都町の契約農家の方から有機のお米をいただいています。毎年の酢蔵びらきには熊本県から生産者が応援に駆け付けてくださり、新鮮な野菜や果物を販売いただいたり、ポン菓子の実演やもち投げでお祭りを盛り上げていただいています。逆に田植えや稲刈りの際には、こちらから応援にいって交流しています。
また、福岡県で採れる特産の果実を使おうと、ブランドいちごの「博多あまおう」を使っての「あまおうビネガー」や、同じく特産の柿や巨峰などを使った果実酢を作っています。福岡県以外の生産者では、「よつ葉の純りんご酢」は青森県の新農研様からりんご果汁と果実をいただいて作っています。単に原料を送ってもらうだけでなく、私たちも現地まで足を運びりんご畑の見学もさせていただきました。逆にお酢の仕込みの際には、福岡県大川の本社までお越しいただき、仕込み〜発酵の様子、製造工程なども見てもらいました。お互い青森県と福岡県で距離は離れていますが、生産者がどのような所で、どのような想いをもって商品づくりをしているのか、知ることができたと思います。また、毎年仕込みの時期になると、畑の様子や生産者の顔が浮かんで仕込にもより一層緊張感が走ります。
このようにお互いに顔の見える関係があってお酢を仕込ませていただくことで、自然と原料の扱いも丁寧になり、出来上がったお酢もおいしく仕上がっているのだと思います。だからこそ、このおいしいお酢を毎日の料理に使っていただきたいと思って、日々お酢造りに励んでおります。
( 庄分酢15代目修業中 高橋 清太朗)
2017年『life』360号
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