四万十川下流漁協 (高知県四万十市)その3

四万十川下流域ではすじ青のり、青さのりの漁業は80年以上の歴史を持つ漁業であり、水揚げされるすじ青のり、青さのりは味・香り・色ともに評価が高く、四万十川ブランドとして流通してきました。特にすじ青のりは全て天然資源で大変希少なもので、青さのりよりも少し上流の岩場や小石(礫)につくのですが、良く分かっていないことが多く、今年は青さのりとほぼ同じ場所で採れました。一方、青さのりは一般のスサビノリと同様の海苔網を海に近い汽水域に張って、そこへ種のりを植えつけて育てるのが主流です。
最後の清流といわれる四万十川でも、ここ数年のすじ青のり、青さのりの水揚げは減少の一途をたどっています。私が漁師となってから20数年で考えれば、青さのりで約半分、すじ青のりは10分の1ぐらいに激減してしまいました。特に昨年度は近年にないほどの水揚げしかなく最悪の年でした。中でもすじ青のりは、私自身は収穫ゼロ、四万十川全体でも最近の平均の10分の1、約200kgしか採れず、青さのりも例年の6割ほどで、ともに販売を断念せざるを得ませんでした。
それに対して今年は、昨年からの黒潮の蛇行により冷水塊が土佐沖にできたせいなのか、10月くらいから水温が下がり始め、12月から1月の異常な冷え込みなども成育にとって良い環境となり、昨年度よりも早く、順調に成長し、少し早い時期から収穫できました。質的にもすじ青のりは長く色濃く育ち、青さのりは葉体が広く、肉厚で歯ごたえのあるおいしいものに育ってくれました。それでも収穫量的には特に良いというわけではなく、例年並みというところですが、今年は製品を生産・販売することが再会できることとなりました。
すじ青のり・青さのりなどの藻類の成育と環境との関係については、山からの栄養や水温、海との関係など、さまざま言われています。また一方でよく分かっていないことも多いようです。ただ、私たち川漁師の経験としては、水温が与える影響が大きいように感じています。数年前に、豊漁の時は上流のダムからの放水で水温が下がって安定しました。今年は冷水塊と冬の厳しい寒波がありました。その点では地球温暖化の影響は、こんなところにも出ているのかもしれません。
一方、四万十川でのもう一つの代表的な漁であるシラス漁(ウナギの稚魚)は、その冷水塊の影響もあるのか、今年は壊滅的でした。1尾1gに満たないシラスは、通常なら100g単位で漁師から指定業者に引き取られるので

すが、今年は100g捕るのに1月以上かかってしまい、シラスが弱ってしまうので、10g単位や極端には尾数で引き取ってもらいました。
以前のような四万十川の環境が戻ってくることを願うばかりです。
(四万十川下流漁協 山崎清美)
2018年『life』250号

青さのりの収穫風景
四万十川下流漁協
四万十川の青さのり
四万十川の汽水域で育った青さのり。
肉厚で香りがよく、鍋物、味噌汁
お吸い物などのおすすめ。
四万十川下流漁協
四万十川のすじ青のり
大変貴重な四万十川の天然すじ青海苔。
香りの良さが自慢です。
お味噌汁やお吸い物などにどうぞ。