桜野園


「喫茶」に「喫茶店」。お茶は長い間人と文化をつなぐ役割をはたしてきた。お茶を慈しみ、ゆっくり楽しむ茶事はいつしか趣味の世界へ。「喫茶」はペットボトル。「喫茶店」は待ち合わせの場所化してしまった、今日のお茶事情である。
茶の原郷は、中国雲南地方。喫茶の歴史は3000年以上前とされる。長い時を経て世界へ。英国では紅茶、日本での緑茶は抹茶中心の茶の湯へと各々形を変えて伝播してきた。鉄観音、ウーロン茶に代表される本家中国茶は長い歴史、広大な地域、多品種、多製法などなど多岐にわたり奥深くハードルが高い。
「ゆっくり茶を楽しむ」伝統文化を守り続けているのは台湾の茶芸館。茶を学び、味わい、楽しめる貴重な場所である。中国茶に素人の私でも、思い入れのあるのは高山茶。阿里山、凍頂などで知られる半発酵茶。中国茶での分類上は青茶(ウーロン茶)。標高1000メートル以上で手もみ製法のみを言う。標高が高くなる程香りも増す。折りにふれて求めてきたこの茶が、なんと国産でごく身近に楽しめることになった。
熊本県水俣市の桜野園代表の松本和也さん。在来品種を中心に無農薬の茶栽培歴30年。
その彼が茶栽培を始めた当初から長年追い求めてきたのが実は「高山茶づくり」だという。
「べにふうき」、アッサム系とダージリン系の交配種で1995年に日本で初めて開発された品種である。樹勢が強く直根も太い。病虫害にも耐性があり、茶カテキンも豊富。花粉症に効く? と一時もてはやされたが、実はこの品種が高山茶に適した品種だった。
べにふうきの自然栽培。台湾の技術を取り入れて6年前から高山茶づくりに挑戦してきた松本さん。実験、試行錯誤をくり返しやっと成功したのが、緑のウーロン茶だ。さわやかで甘い花の香り。二煎目、三煎目も残香が楽しめる。同時期に開発した黄のウーロンは無農薬栽培のやぶきた種。強すぎず品の良い焙煎香が際立つ。松本さんの30年来の夢がやっとかたちになった。楽しみである。

桜野園代表の松本和也さん
桜野園
緑のウーロン茶
自然栽培のべにふうき茶で作りました。きれいな緑の水色で台湾の高山茶を思わせる華やかな香りです。
原材料:半発酵茶(べにふうき種)
桜野園
黄のウーロン茶
やぶきた種を半発酵で仕上げました。強すぎず丁度よい焙煎香が印象的。食事の間に飲むお茶にも最適。
原材料:半発酵茶(やぶきた種)