おきたま興農舎 (山形県東置賜郡) その1
暮らしを彩る豊かな食を
私が小さい頃、8月23日は子育地蔵のお祭りがありました。夜、母親に連れられ、ゆでた枝豆一鉢を持ち、提灯のあかりを頼りにお寺へ集まり、お地蔵さまのお供えをした後、ほの暗いお堂で各家の枝豆を食べ比べしたものです(それぞれ茹で方が違う!)。
9月に入れば豆名月があり、秋の彼岸。10月は芋名月でサトイモを食べる。それらの行事は必ず団子やおはぎがつき物であった。日本の主食であるお米や、主食といえる豆や芋類は、なんとさまざまな姿で私たちの食と暮らしを彩ってくれたことだろう。自然の恵みに感謝し、子どもたちや人々の健やかなることを願い、そして、その大切さをつないでゆく。
春、蓬(よもぎ)の若葉が出始めると祖母はもち粉で蓬もちを作り、きな粉や胡麻をまぶして学校から帰ってくる私たちを待っていてくれた。実家の父は農閑期になると、そばを打ち、上新粉やうるち米を使った団子を作って食べさせてくれた。肉や魚が十分でなかった時代に、米や豆類のもつ栄養の豊かさをどのように会得していたのかと。数値でしか見ない、測れない、現代の様相は一抹の不安を覚えてしまう。
今年もお盆が過ぎ、秋の彼岸が近づく。そんな折、団子やおはぎから、昔の、貧しくも豊かだった頃の食を思い出します。
(おきたま興農舎 小林 清子)