日東醸造 (愛知県碧南市) その2
究極の白醤油『足助仕込三河しろたまり』
愛知県碧南市発祥の食文化の一つとして白醤油があります。白醤油とは、通常の醤油が小麦と大豆を同量で醸造するのに対して、9:1 程度で小麦を多く使って醸造するもので、色は琥珀色で透明、糖分が多く甘みがあるのが特徴です。その由来については諸説ありますが、金山寺味噌の上汁がうすく綺麗な色をしており、またおいしかったため、調味料として使い始めたのが起源とされています。以来、料理人が素材の色を生かした綺麗な料理を振舞う際に使われてきました。
私たち日東醸造は、創業以来約80 年間この白醤油を作り続けてきました。しかし、白醤油は醤油生産量の1%未満で認知度が低く、知らない人が多いのが現実。そんなことから“究極の白醤油を作ってその魅力を広めたい”という先代会長の想いで、20 年ほど前から麦麹を通常の白醤油の2 倍量使用した「足助仕込三河しろたまり」の製造をスタートさせました。
しろたまりは、標高720m の山里に建つ、足助(現豊田市大多賀町)・旧大多賀小学校に杉樽を並べ仕込蔵とし、その小学校の地下から汲み上げた井戸水、塩は伝統海塩「海の精」、そして肝心の麦麹は愛知県産小麦にこだわり、90 日~ 120 日間かけてじっくり発酵・熟成させて完成させます。このように、しろたまりは“究極”を求める中で麦麹だけで醸造した調味料“麦醤”で、大豆を一切使用しないため法律上は“醤油”ではなく、“小麦醸造調味料”という表示になっています。
今後は、主原料である小麦を、更に生産者がはっきりとわかるものに切り替えていくことを目標とし、まずその一歩として、僅かではありますが仕込蔵の近くに研修目的の畑を借り、自分たちで小麦の栽培に取組みはじめました。近い将来、原料の一部になればと思っております。
しろたまりは、料理に色を付けず豊潤な香りとコクを出すことができるため、お吸い物、煮物、鍋物、茶碗蒸し、などの和食料理に最適。また、最近ではラーメン屋さんがスープに混ぜたり、フレンチやイタリアンの隠し味などにも使われる機会が増えています。ぜひ、さまざまな料理で試してみてください。
(日東醸造 蜷川 洋一)