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本村製麺工場 (長崎県南島原市)
島原半島で採れた小麦粉で作る 本物の“島原そうめん”を目指して
長崎県の南西に位置する島原半島。私たちは、その中の人口7000人ほどの小さな町、南島原市西有家町でそうめん作りを営んでいます。周りの工場と比べると小さくて生産量も少ないのですが、親子三代に渡り、一年中朝早くから作り紡いできた味を守り続けています。
同町の須川地区は、島原そうめん製造の発祥地であり中心地でもあります。地元に住む昔からの人は、島原そうめんではなく、「須川そうめん」と呼ぶほど、誇りを持っています。そうめん製造の事業所数は、お隣の有家町と合わせると380件ほどあり、全国2位の生産量です。そうめんは地元の食べものとして深く浸透し、商店やお米屋さんでは新聞紙にくるまれて販売されていたりします。
そんな地でそうめんを作るということ。…それは、技術を受け継ぎ、次につなげ、そして誇りにできるようなおいしいそうめんを残していくこと。
私たちは、そうめんの原料である小麦を自分たちの手で栽培することにこだわっています。きっかけは、ある人からの質問からでした。「本村さんのそうめんの小麦粉はどこから仕入れているの?」私は「大手の製粉会社です」と即答しました。しかし、その後考えました。その人は、本来、島原そうめんは、地元でとれた小麦粉を使って作るから、“島原そうめん”というのではないか? 島原という場所で作るからというだけでは、本当の意味で島原そうめんとは言えない、と言いたかったのではないか?と。
それから1年後、私は小麦を育てる決意をしました。自分の手で作った小麦でそうめんを作ってみたい。そして、本当の島原そうめんを次の世代に伝えていきたい、との思いからです。それから毎年、知り合いの農家さんを巻き込みながら、なんとか小麦を栽培し、それを小麦粉にしてそうめんを作っています。最初は、地粉特有のベタつきに悩まされたり麺が延びず失敗したりと、毎回試行錯誤でした。3 年ほど経って、どうせやるならと、小麦粉以外の原料の食塩や麺に塗布する植物油も島原半島で製造されたものを使うことにしました。これで純島原手延そうめんが完成しました。“Made in Shimabara”です。
今年で11年目になります。多くの方から応援していただけるようになり、反対していた家族も今では手伝ってくれるようになりました。お陰で作付面積も増やすことができました。小麦を育てることで、地元や県外の農家さんとのつながりができ、最近では同業他社の若手生産者の方と小麦づくりについて話をする機会も増えました。幾つかの事業所さんでも、小麦づくりを始めました。食に対する考え方も変わってきたのを感じています。今後は、この輪をもっと広げて、昔ながらの島原そうめんを次の世代に伝えていくことが、これからの目標です。
(本村製麺工場 本村 幸雄)
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