森田醤油店(島根県仁多郡奥出雲町)

森田醤油店は島根県の東南、鳥取県と広島県に接した中国山脈の麓の奥出雲町にあります。奥出雲地方は神話のふるさとといわれ古くから「たたら製鉄」が盛んに行われてきた地域です。そして奥出雲は良い水と空気に恵まれ、山奥にあるために寒暖の差が大きく(夏暑くて冬は寒い、昼暑くて夜は気温が下がる)、醤油の寒仕込みのできる期間(仕込み後10℃以下の期間が半月程度)が長く、醤油づくりに適した地域でもあります。
私たちは、この奥出雲の地で100年以上にもわたって醤油造りを続けてきました。島根県を中心とした国産の大豆・小麦を原料に麹を造り、原料処理から仕込みまで一貫して自社の工場で行ない、自社で醸造した国内産丸大豆醤油並びに醤油加工品を販売しております。代々続く蔵には昔からの酵母が生きており、寒い冬に仕込んだ後は1〜2年かけて熟成していきます。
また、ぽん酢などの醤油加工品の製造では、昆布やかつお節を煮出して出汁を取るなど、家庭の台所でできるような製法で製造しております。実ははじめは、醤油に無添加のかつおエキスや昆布エキスなどをブレンドして試作を繰り返していました。ところがある時、販売先の担当者さんが「森田さん、将来は商品をつくる基となる原材料についても情報が必要になるので、今のうちから確認しておいた方がいいですよ……」と助言してくださいました。早速原料の確認をしていると、かつおからできているはずの“かつおエキス”の原料はかつおだけではないんだ! と、いろいろ気づかされたのです。結局、昆布・鰹節などを自社で煮出してつくることにしました。途中でいろいろ苦労はしましたが、悩んだ結果すっきりした香りの良いぽん酢に仕上げることができました。この経験から、子どもたちが日常口にすることを思い、食べて害のないものというより、
食べ続けて良いというものを……という気持ちで、原料から吟味したものを使って商品を製造しております。
そして、昔ながらの製法を守り続ける一方で、おもしろそうなこと、自分が食べてみたいなと思ったことにはまず取り組んでみるという姿勢で、やったことのないものにもチャレンジしています。今、取り組んでいることは、農業生産者さんが自分たちで作り、気に入っている原料を仕込んでいくという委託製造の取り組みです。原料に特徴があり、熟成期間も1年の場合と2年の場合の違いを知ってもらいながら醸造しています。大豆・小麦・塩だけのシンプルな原料ですが、素材の特徴が出たり、熟成期間により違いが出たりとそれぞれに個性が出てきて喜んでいただいております。
今や醤油はスーパーの安売り目玉商品として、殺菌して瓶詰めするだけの飲料水より安い値段で販売されてしまう時代です。森田醤油店の醤油は、生活を豊かにし夢のあるものにしようと、国内産丸大豆を使った醤油や、その醤油を使った加工品に取り組んでおります。
(森田醤油店 森田 郁史)
2018年『life』80号

森田醤油店
有機ゆずぽん酢
有機醤油をベースに有機純米酢、
有機ゆず果汁、有機砂糖で味を調えました。
森田醤油店
有機国産丸大豆醤油
国産有機原料を昔ながらの木桶で仕込み、
2年熟成させた本醸造醤油。