杜の蔵(北海道札幌市)


「杜の蔵」は1898年に創業。1920年には清らかで豊富な水を求めて現在地に移転しました。この地は九州で一番長い河川である筑後川の流域に広がる筑後平野のほぼ中心に位置しています。豊かな水と実りに恵まれた当地は古くから酒蔵が立ち並ぶ日本有数の酒処です(時代とともに減少しましたが、今でも久留米市には日本酒蔵が12蔵あります)。
「杜の蔵」では契約栽培した酒造好適米(福岡県産100%)と蔵の地下から汲み上げた軟らかな味わいの水のみを使用しており、自社田はもちろん契約の圃場にも足を運び生産者と共に目標とする酒のための米づくりに取り組んでいます。また、製造スタッフは親子代々技術を受け継いできた杜氏を筆頭に、ベテランから若手まですべて地元の出身です。これら、米・水・技(人)、という酒造りの3本の柱を地元で揃えることも、私たちは地酒蔵の誇りとして大切に考えています。
2005年より当蔵の日本酒は米・米麹と水のみを原料とした全量純米づくりです。酒質は蔵伝統の上品で柔らかな味わいのものや現代の幅広い食との相性を意識したものなど、時代の流行だけでなく独自の旨さの創造も大切にしています。総じてその味わいはグラスを重ねるごとに、また食事と一緒に楽しむことで、より一層評価が高まる傾向にあり、今後も「種籾から酔い覚めまでを意識できる酒蔵」でありたいと考えています。
もう一つ、当蔵は創業より本格焼酎を手掛けています。それは、地元農村文化のなかから生まれた酒粕焼酎であり、また福岡県産の二条大麦を使った麦焼酎など、原料特性を生かした商品づくりを行っております。
さらに、当蔵の理念でもある「旨いの先にある幸せを提供し、豊かな食卓づくりに貢献したい」の一環として、2012年より酒蔵由来の食のブランド「百福蔵(ひゃくふくら)」を始めました。そのなかから生まれて、皆さまから高い評価をいただいているものの一つが「琥珀の料理酒」です。当蔵には農薬不使用で栽培した酒米・山田錦から醸す純米酒がありますが、貴重なお米ですので等外米も余すことなく有効に使いたいと考え、料理酒を造ることにしたのです。料理専用にするため各工程で米と麹由来の旨みをなるべく多く引き出すように仕込み、そこに熟成酒粕を漬け込みます。さらに熟成期間をとることで琥珀色に輝くお酒ができあがります。天然アミノ酸やコハク酸などの旨み成分が一般的な日本酒の2倍以上(自社純米酒比)のため、通常の半分ほどの使用量で効果があります。

これらの百年をはるかに超える酒造りで培った技でお届けするおいしさ、自ら素材からつくる安心のおいしさ、余計な添加物に頼らずに生み出すおいしさは、現代の食生活をより豊かなものにするお手伝いができるものと願っております。
(杜の蔵 森永一弘)
2021年『Life』80号

福岡県糸島の契約圃場

できあがったばかりの米麹
杜の蔵
百福蔵 琥珀の料理酒
福岡県産農薬不使用栽培の山田錦を使用。
熟成酒粕四段仕込みにより、アミノ酸、
有機酸などの旨み成分を多く含む料理酒です。
アルコール分:15%
※これはお酒です