朝倉物産(福岡県朝倉市)


私は37年前、30歳の時に博多万能ねぎの創始者の1人である父の跡を継いでねぎ農家になりました。最初の2~3年は農協へ出荷していました。ところが、どんなに良い有機肥料を使っても、安い化学肥料で作ったねぎと評価が変わらないことなどから、自分は何のために農業をするのかと考え始めました。農協に自分の人生をかけて出荷する気にはなれないと思い当たり、自分1人でやろうと決断し、1986年4月に独立して朝倉物産を設立しました。
私はおいしい食事をすると、いやなことがあっても、また明日から頑張ろうという気持ちになります。そのおいしい食事で健康になればもっと良いと考えました。そこで完全有機肥料だけでねぎを栽培し始めました。困難がいくつかありました。1つは、有機肥料だけでねぎを作ると色の濃い緑がなかなか出ないのです。そのため市場では評価が下がってしまいました。それを解決するには、種をまく間隔を通常より2倍に広くして太陽の光が多く入るようにしました。加えて栽培日数を2割くらい多くしました。父からは常識知らずと言われましたが、やり続けた結果、上質の有機肥料でしかできないねぎが育ちました。色、日持ち、風味、味すべてが極上です。
このねぎを気に入った、地元福岡のイタリアンレストランのオーナーシェフがドレッシングの材料に採用してくれました。そしてシェフから、私自身がドレッシングを作った方が良いと勧められ、作り出したのがねぎドレッシングの最初です。しかし、当初のドレッシングは化学調味料で旨みをつけていて、これをなんとかしようと、妻と3ヶ月ほど試行錯誤して米麹で旨みを出すことができました。これが現在の無添加、ねぎドレッシングです。
ただし、私自身は農家で味に確信が持てないので、思い切って東京の一流ホテルのシェフに飛び込みで味を見てもらいました。すると、このシェフが快く応対してくださり、このままで良いと言ってくださったので、商品化に踏み切ることができました。
今、日本は農業が衰退し、希望が持てない状況になっていると感じます。これは、食べ物を軽視し、深く考えることをしない消費者が増えていることと、作る側も食べる人のことを考えずに来たツケだと思います。
私は、安全・安心でしかも栄養素の高いおいしい食べ物をこれからも作り続け、日本農業の進むべき道を開拓していきたいと思います。
(朝倉物産 花田信一)

花田信一さん

ねぎドレッシングの製造

化学肥料を使わず育てたねぎをふんだんに使ってるのでねぎの風味がしっかり感じられる味に仕上がっています。サラダにはもちろん、肉料理や魚料理など、いろんな料理にも使えて便利。