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南相馬農地再生協議会(福島県南相馬市)

菜の花プロジェクトで、農地の再生と安全な国産ナタネ油を 

■はじめに
福島第一原発事故から4年が過ぎた。事故が収束する見通しもない中、被災地の人々は今も厳しい暮らしを強いられている。NPO法人チェルノブイリ救援・中部は1986年4月に起きたチェルノブイリ原発事故被災者の支援を1990年から始めた。その過程で汚染地域の人々の内部被曝を少しでも減らそうと取り組んだのが「ナロジチ再生・菜の花プロジェクト」である。チェルノブイリ原発から西方70kmのナロジチ地区には事故後も約1万人の人々が暮らすウクライナで最も汚染の酷い地域である。かつては畜産業と農業の村だったが汚染で野菜の商業栽培や畜産は禁止され人々は自給自足の生活を強いられていた。さまざまな調査を重ね、植物による除染(バイオレメディエーション)を始めることにした。地区行政や非常事態省傘下の役所、国立農業生態学大学の研究者らが協力してくれた。20年以上放棄された大地で2007年からナタネの栽培を始めた。ナタネを採用したのは、土壌から放射性セシウムを効率よく吸収するからである。その結果を福島で応用するのは何とも皮肉である。

■菜の花プロジェクトで分かったこと
ナタネの種子はセシウムで強く汚染するが、ナタネ油は全く汚染しない。植物が吸収するのは土壌中の「水溶性セシウム」で、土壌に固着しているセシウムは吸収しない。その結果、細胞中でもセシウムは水分に溶けた状態で存在し、種子から油分を分離する際、セシウムは全て油粕に行き、油には溶けない。ストロンチウムも同じである。ウクライナではナタネ油を食用にする習慣がないのでバイオディーゼル燃料に転換し、トラクター等の燃料として利用した。汚染した油粕や茎、葉などのバイオマスはメタン発酵菌でバイオガスを作り燃料として利用。放射能はバイオガス装置の廃水にすべて含まれるが、ゼオライト吸着槽でコンパクトに減量し、低レベル廃棄物として処分する。肝心の土壌浄化は期待した程でなく、年間5%位のセシウムが土壌から除去されるだけであることが分かった。しかし、新たな発見が道を開いた。通常、ナタネは連作障害のため同じ畑に続けて栽培できず小麦などの裏作を作るが、分析の結果小麦は検出限界以下、ライムギや大麦、蕎麦なども食用や家畜飼料に利用できるレベルだった。こうして、諦めていた汚染大地でも新たな農業が可能であることが分かった。こうした成果を政策提言書にまとめ、ウクライナ政府に出そうとした矢先の2011年3月、東日本大震災に伴い福島第一原発が爆発、ウクライナと同じ状況が日本でも発生したのだった。

■南相馬で始めた菜の花プロジェクト  
福島事故後、私たちは南相馬市に拠点を置いて活動を始めた。内容は①南相馬市内一円の空間線量率を半年おきに測定し汚染マップを作る。②住民に野菜や土壌などの放射能測定を無料でサービスする。③2013年から農家の方々と協力して菜の花プロジェクトを開始し、「南相馬農地再生協議会」を設立した。南相馬のナタネ油にもセシウムは全く含まれず、ゲルマニウム半導体検出器による精密分析では検出限界が0.031Bq/kg でもND(検出せず)だった。2014年秋には17.5ヘクタールにナタネを播種した。相馬農業高校の生徒たちの協力で南相馬産ナタネ油が商品化された。名前は「油菜(ゆな)ちゃん」、ラベルも高校生のデザインである。現在、国内の食用油(キャノーラ油)のほとんどはカナダ産の遺伝子組換えナタネが原料である。こうした状況も踏まえ、安全な国産ナタネ油を福島の特産品にしたい。汚染した油粕などはウクライナと同様バイオガス原料にして地域のエネルギー自給にも役立てたい、というのが私たちの夢である。

(NPO 法人チェルノブイリ救援・中部 河田昌東)
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