みちのく農産(青森県七戸町)
今年の「夏娘」は酒粕肥料の”甘酒トマト“で贅沢に
私が農業を継ぐことを決意し、約4年勤務したトヨタ自動車を退職してUターンしたのは24歳の時でした。家から近い青森県立営農大学校で、6歳年下の学生たちと2年間農業を学びました。その時に、果実が大きくなるのを見ながら栽培でき、何段も収穫できるトマトに興味を持ちました。
ハウス2棟から始めたトマト栽培も20年経ち、今は11棟(1320坪)で栽培しています。栽培面積の増加に伴い出荷量も増えましたが、規格外のトマトも増えました。最初の頃は、近所・友人・親族に配れば無くなる量でしたが、次第にそれでは処分し切れなくなりました。そんな時、2009年に開催された農商工連携セミナーでトマトジュースの加工方法を学び、その年の秋からトマトを加工して販売するようになりました。
トマトの味は品種や天候の影響が大きいと思っていましたが、生産者の栽培方法でも結構違いが出ます。当農園のトマトと私たちからハウスを数棟借りて栽培した研修生のトマトを食べ比べた人から、私たちのトマトの方が断然おいしいと言われた時は、肥培管理が味に対しても大きく影響することを実感し驚きました。
また夏のトマトはジュースにすると秋よりもさらっとしていて、トマトジュースが飲めなかった人も飲みやすいと言ってくれます。自分でも夏と秋とではトマトの味が違うと思っていたので、トマトジュースは夏と秋に分けて作りたいと思っていました。あとは名前をどうするかです。トマトは自分の子どものように育てているので、その気持ちを込めた名前にしたいと思い、「夏息子と秋息子という名前はどうだ?」と当時小学生だった二人の息子に聞いてみました。すると二人とも、「う~ん、…おいしそうな気がしない」と言うのです。その時点で「夏娘」という名前に決まりました。
今年のトマト栽培の特徴は、酒粕とボカシ肥料を使っていることです。4年前に、地元の酒造会社から、「酒粕を全部もらってくれないか」と依頼され、有機質肥料としての使用方法を模索し始めました。昨年、酒粕を液状にして肥料にする方法をネットで見つけ、未経験なので内心ハラハラしながら液状の酒粕を撒きました。トマトはいつもの年と同じように生育したので、手応えを掴んだ今年は、1万株のトマトに酒粕を8トン投入しました。甘酒として飲んでもおいしい酒粕を肥料としてたっぷりと与えられて育った、贅沢なトマトで作ったジュースです。ぜひお試しください。
(みちのく農産 哘清悦(さそうせいえつ))
ハウスの安定した環境で栽培されるトマト
みちのく農産の皆さん。右端が哘さん