丸友しまか(岩手県宮古市)その1
他にはない、サクラマスの「へしこ」に挑戦!
今回ご紹介する「桜鱒へしこ」は他に類を見ない商品です。日本全国どこを探しても、製造を行っているのは、私たちが加入している宮古水産物商業協同組合だけです。
ことの発端は、震災後に上記の私たちの組合と東京海洋大学とご縁ができて、組合員向けにセミナーを行っていただいたことでした。そのセミナーの内容は、1つが「オキアミの練り製品」について、もうひとつが「さばのへしこ(糠漬け)と宇宙食」についてでした。このセミナーを聞いて、上記組合の組合長でもある当社社長が、この2つをぜひ宮古でやりたいと、プロジェクトチームを組み、商品化に向けた活動が始まりました。
「へしこ」とは、もともと福井県若狭地方に伝わる伝統食。塩漬けしたサバなどをさらに糠に漬け込み、熟成させて作る発酵保存食で、積雪と荒波で閉ざされる冬にこの地域で貴重な蛋白源として食されてきたのだそうです。私たちは、セミナーを受けるまで、へしこの名前も知りませんでしたが、発酵させて保存する知恵に感銘を受けました。“どうせやるなら、他には無い魚種で作ろう”と、通常は加工用に使われることが少ないサクラマスを使ってみようということになりました。まず、宮古で獲れたサクラマスを講師をしてもらった福井県立若狭高校の小坂先生に送って、先生と海洋科学科の生徒さんたちで「桜鱒へしこ」を試作製造してもらいました。塩漬けの塩分濃度や期間、糠漬けの漬け込み方などいろいろ試してもらって出来上がった試作品は、上々の出来だとの評価をいただきました。
この試作を受けて昨年5月末に、若狭高校の生徒さんたちに宮古に来てもらい、一緒に「桜鱒へしこ」の糠漬け作業を行いました。漬け込み後は、定期的に状況を報告し、必要に応じて糠に手を加えながら進めました。また、私たちも福井県小浜市に出向き、地元のへしこ製造の加工場の見学や話し合いなどを行い、“へしこ文化”を学び、へしこに関する見聞を広げてきました。
さまざまな事やたくさんの人の関わりを経て、ようやく形になった「桜鱒へしこ」。宮古水産物商業協同組合と福井県立若狭高等学校海洋科学科の生徒の想いが詰まった商品に仕上げることができました。お茶漬けやパスタの具材に、薄くスライスした大根に挟んで、など食べ方はいろいろ。サクラマスの上品な味わいはそのままに、へしこならではの発酵の味わいをお楽しみください。
(丸友しまか 島香友一)
旬のサクラマスのおいしさを塩と糠で閉じこめます
若狭高校の皆さんと行った糠漬け作業