丸友しまか(岩手県宮古市)その5


(2017年 『life』100号)
宮古市魚市場では、底曳網(そこびきあみ)や延縄(はえなわ)で漁獲されたスケソウダラは年間約7,395トンの水揚げがあります(2014年度調べ)。これは、宮古市魚市場の年間水揚げの約17.9%で、サンマ、マダラに次ぐ3番目に多い量です。これだけ多くのスケソウダラが水揚げされているにもかかわらず、その利用といえば、大半が他県へ出荷されているだけなのが実情です。
こんなに多く水揚げされる原料があるにもかかわらず、地元宮古にはこのスケソウダラを使った加工品はありませんでした。私の父(社長)は、かねてからこの“未利用魚(水揚げされているのに活用されていない魚)”に疑問と危惧を感じていました。そこで、「おきあみ〜と(これも未利用魚=オキアミを使ったサツマ揚げ)」などの商品開発でお世話になってきた東京海洋大学の大迫准教授に相談したところ、“魚屋が作れる範囲内で、宮古のスケソウダラを使った一番良い練り製品(かまぼこ)を作ろう”ということになりました。
かつて長崎県で練り物工場を見学したときに得られた情報を思い返し、専門書を熟読し、そして大迫准教授から技術アドバイスをいただきながら、私たちの会社にある現状の設備で製造できる範囲内で“最良のもの”を目指しました。澱粉の含有率やチーズや食塩の分量に加え、食感の硬度加減など、幾度となく試行錯誤を繰り返しました。従業員全員でも、何度となく試食もしました。
ある程度、目指すべき味や食感が決まり、準備が整い始めた矢先、昨年8月末に襲った台風10号の被害で。工場全体が1m 以上浸水し、コツコツとストックした原料、製造に必要な設備も使用不能となり、商品製造はゼロからの再スタートで、販売が大幅に遅れる結果となりました。が、その分、製造レシピにさらなる改良を加え、私たちとしてはベストのかまぼこ製品を作ることができました。
こうしてできあがったかまぼこ(焼きかまぼこ、揚げかまぼこ)の最大の特徴は、原料のスケソウダラを自分たちの目で判断し、良いものを地元の魚市場から仕入れ、原魚から落とし身の製造までを一貫して自分たちで行っていることです。これにより、他の製品よりも遊離アミノ酸が豊富であるという結果が出ました(大迫准教授調べ)。
また、一般的な練り製品には、原料すり身の製造工程に“水さらし”があり、この工程で元の魚肉に含まれる臭みや汚れを取るのですが、私たちはこの“水さらし”をしません。これは、鮮度の良いスケソウダラを使っている証であり、スケソウダラ本来の旨味のあるおいしいかまぼこができるのです。

その他の原料も最低限必要なものだけ。もちろん添加物・保存料は一切不使用。魚の味を堪能できるかまぼこをぜひご賞味ください。
(丸友しまか 島香 友一(ともかつ))
丸友しまか
島香さんの揚げかまぼこ
岩手県沖で漁獲されたスケソウダラの落とし
身から自社製造しているので食感が違います。
丸友しまか
チーズ入り焼きかまぼこ
減塩効果のあるヘルシオライトという食塩を
使用。ほんのり甘くぷりっとした食感がたまらない。