まえた(新潟県新潟市)


私たちまえたは1945年、前田漬物店として創業。創業時は野菜の漬物を製造し、1955年頃から魚の味噌漬、粕漬、塩引鮭なども手掛け始めました。以来、塩の力で魚の身を馴染ませるという古くから伝わる製造法を今も受け継いでおります。
かつて1960年代、露天市場での販売が主で作ればなんでも売れる時代には、合成着色料や化学調味料を使用して製造していました。しかしある時、「三河みりん」をいただいて盃一杯飲んだところ、「みりん」が体にスッと入っていく感覚を味わいました。それ以来、私たちの商品は、言うまでもなく、魚は天然もの、調味料も天然素材で製造しています。
よく「魚本来の味」という言葉を聞きますが、魚の塩漬、干物は塩加減が重要です。糀漬、味噌漬、粕漬などの漬魚も最初の塩加減、そして醗酵の具合が重要です。「加工するから少し鮮度が落ちた魚でも良い」はダメ! 鮮度が良いことは大前提で、さらに魚の身質、気温、湿度によって塩の仕方や糀、味噌、粕の漬込み方を変えないとおいしい加工品はできません。そのために知識と経験が必要になってくるのです。
「塩加減や漬込み具合がわからなかったら、魚に問いかけると何か答えてくれる」 これは、職人を指導する際の言葉です。創業75年にしていまだ失敗と成功の繰り返しです。新潟県は他県に比べると漁獲量が少なく魚も安くはありませんが、多品種の魚が水揚げされます。私たちには大量生産できる製造ラインはありません。そのかわり、いつどんな種類の魚が入荷しても対応できる多品種少ロット生産が強みです。
最近は、魚も簡単に味付けができる調味料が売られています。調味料がダメとは言いませんが、魚を味わうというよりも調味料の味で魚を食べている感じがします。私たちは、まずは塩で魚の旨みを引きだした魚、干物で魚そのものの旨みを味わっていただきたいと願っています。私たちの商品は、グリルで焼くのが一番おいしく召し上がれますが、「簡単に調理したい」「調理する時間がない」「フライパン調理が良い」などのご要望を多くお聞きし、冷凍のままフライパンで焼ける干物や漬魚などの製造にも力を入れています。
近年、魚の乱獲や海水温の上昇、異常気象などが原因で漁獲量が減っており、今後もそうした状況は続くと言われています。そんななか、持続可能な水産業を下支えするために漁師さんたちと連携し、その時々に獲れた

魚を使った加工品の商品開発にチャレンジしたいと考えています。私たちにとって会員さんからの「おいしかった!」という声が聞けるのが一番の喜びです。今後も当たり前の商品作りを手を抜くことなく当たり前にできるよう励んでいきます。
(まえた 前田隆)
2020『Life』310号

まえた
もったいない ちだい開き
魚体が小さく値段がつかないため、
売り先に困っていた「ちだい」を干物にしました。
まえた
ふぐ醤油糀漬
新潟産ごまふぐを特製の醤油糀に漬け込みました。
冷凍のままフライパンにフタをして焼いてどうぞ。