カンホアの塩(ベトナム・カンホア) その2

ベトナム・カンホアで塩を作り始めたキッカケをよくきかれます。その多くは、「塩のプロとして、貴方はなぜカンホアを選んだか?」という格好いい内容なのですが、私がカンホアの塩田を最初に訪れたのは、1998年2月。それは個人的な旅行で、そのとき塩田の塩を一握り、持ち帰ったことがキッカケでした。少しも格好よくないし、もちろんそのとき、塩作りについて、私は全くの素人でした。
その3カ月後、今度は塩を意識してベトナムを再訪。すると偶然にも私が持ち帰ったカンホアの天日塩生産者とつながり、会うに至りました。これには驚きました。さらに、「君がこうしたいのなら、してみましょう」と、私が試したい製法のレールを次々と目の前に敷いてくれました。しかし私にとって、そのレールは足下付近が見えてるだけで、その少し先は真っ暗。持っていた何となくのイメージは全く通用しない。この辺りから、私の「塩って何なんだ?」という自問自答が始まり、素人ではなくなっていきました。
ところで、今ある地球の生態系の、最初の生命誕生は、およそ40億年前。場所は海底だったと考えられています。またその頃の海水は、今の海水と異なっていて、例えば、酸素はなかったと。それ以降、40億年をかけて、環境(海水・大気・土壌)と生命体は、互いに影響を及ぼし合いながら変化し、現在の環境と生態系になりました。その一部として私たち人間は生きていて、海水の成分を今も必要としています。その「海水の成分」が、人間にとって「塩」なんだと、私は思っています。
海水は世界中どこでもだいたい同じ。塩の味は作り方によって決まります。塩を知るには、まずは海水を知ること。次に、その海水を濃縮すると、「どういうことが起こるか?」を知ること。海水(液体)を濃縮すると、海水全体の成分が均一に塩(固体)にはなりません。濃くなるにつれ、成分によって塩になっていくタイミングが異なるのです。このたった2つの知識で、岩塩を含め、ほぼ全ての塩の違いが分かります。そして、塩の作り手はこの2つの知識で、塩の味を決めそれを安定させます。

人は十人十色。おそらく人にとっての「おいしい」もさまざまでしょう。ですから、実は私は「自分の身体が喜ぶ塩」を、「カンホアの塩」として作っています。「自分の身体が喜ぶ」を感じ取ることは極めて感覚的ですから、ここに知識の入る隙間はありません。少量でも毎日使う塩だから。その塩を知るには知識を。そして塩選びには貴方ご自身の「身体が喜ぶ」を探してみてください。
(カンホアの塩 下条剛史)
2018年『life』260号

塩の収穫風景

焼塩を鎌炊きしている様子
Information
7月8日(日)に「よつばの学校公開講座」で下条さんの講演会があります。
(於:ハービスOSAKA プラザ5F 会議室 14時〜16時)
少しだけお席に余裕がありますので、興味のある方は、
先ず電話にてお問い合わせください。
(TEL 072-638-2915 担当:福井)
カンホアの塩
カンホアの塩(粗塩)
ベトナム・カンホア地方に伝わる天日塩田で作った塩。
ミネラルバランスに優れ、お料理に最適です。
カンホアの塩
カンホアの塩(焼塩)
ベトナムの完全天日塩を専用の石釜で焼きました。
振り塩などに最適です。