健一自然農園(奈良県大和郡)
『人間がなぜに、自らの一部の自然を破壊して、不幸の道を歩もうとするのか? どうしたら、自然と調和した社会が作れるのか?』。
15歳のときに沸き上がったごく素朴な問いの答えを模索した結果、僕は自然農法と出会い、そしてお茶と出会いました。
僕たちの農園が位置する奈良・大和高原は、標高が200~600メートルあり、冬はマイナス10度近くまで下がり、夏は朝晩とっても爽やかで、その寒暖の差と立ち昇る朝霧が、滋味豊かな香り芳しいお茶を育みます。僕らの茶畑は、農薬は一切不使用。肥料も草や落ち葉などの自然堆肥以外は施しません。そんな茶畑を訪れた皆さんは口にします。
「 土が本当にやわらかいです!」
「 自然ないい香りがします?」
そんな土に根ざしたお茶を丁寧に摘みとって、茶葉のバイブレーションを感じとり、茶葉のなりたいお茶にエスコートしながら、仕上げてゆくのが茶師の腕の見せどころ。
今、僕たちが力を入れているのはマクロビオティックで使われる、通称「三年番茶」。特徴の一つは100%薪火で焙煎すること。そして、大和高原の風に吹かれながら3~4年の間、雨の日も、日照りの日も、そのすべてを記憶して育ったお茶の木をザクッと根元から収穫して作ることです。それを掃除、切断、選別して薪火でじっくり焙煎。そこから半年寝かせて、さらにもう一度、薪火で焙煎することで完成します。
僕がこの地にたどり着いたとき、そこにあったのは放置された茶畑と山林でした。今のお茶作りは、薪を使うことで山林の手入れになり、茶畑のみならず、地域の息吹を蘇らせる可能性を秘めています。その土地に存在する素朴なものに目を向けること。それが、15歳の時に僕が抱いた問いの答えなのかもしれません。
(健一自然農園 伊川 健一)