金子製麺(神奈川県足柄上郡)

神奈川県中井町は、古くから清らかな湧き水が出る美しい田園の郷です。かつては小麦の産地として一面黄金色の畑から収穫された小麦の製粉所として、1877年に創業したのが金子製麺です。以来、製粉から製麺へと百数十年の歴史があります。
頑なな職人気質から生まれるこだわりの製品は、いっさいの添加物を使用せず、穀物の持つ素材の味を引き出す多加水熟成製法により導き出された風味・コクのある「昔ながらの味わい」を守る本格麺です。その年の収穫、気候、職人の手(技術)の3つの環境、つまり極めれば人の手の加減がその品質を大きく左右するのです。
私たちの何よりのこだわりは小麦。現在、金子製麺では50種を越える商品を製造していますが、そのすべてにおいて小麦は契約栽培の農林61号を中心に使用しています。この小麦は、戦後日本を代表する品種として長年にわたり食文化を支えてきました。そして現在も、風味、コク、弾力、豊かな味わいが楽しめる小麦として根強い人気とファンを持っています。私たちは、この農林61号が日本の風土に適し、日本の食文化に根付いた日本を代表する麦だと考え、これを「後世にも伝えていきたい」との思いから、この小麦を皆さまに親しまれる食品としてカタチにすることが、金子製麺の使命であり挑戦だと考えています。そんな考えから、餃子やシュウマイの皮なども、「皮を味わう」をコンセプトに商品開発し、おかげさまで人気商品のひとつとなっています。
もうひとつのこだわりは、その小麦を昔ながらの低速回転の製粉機で挽くことです。他の多くの製粉工場では時間や手間のかかる工程として敬遠される作業です。しかし、風味を尊重し栄養を極力落とさないためにはこれが一番と、私たちは考えています。
さらに、塩はまるみのある味と素材本来の旨味を引き出してくれる「天海の塩」(高知県室戸沖の海洋深層水から作られた平釜塩)と「赤穂の天塩」(オーストラリア産の天日塩から作られた再製塩)を使用。また水は、より安全でおいしく、さらには食材の持つ味を最大限に引き出す水として調理用電解水を使用しています。
今や私たちの食卓に欠かせないものとなった小麦。老若男女、食とコミュニケーションをつなげるこの宝物を、私たち金子製麺はこれからも真面目に大切に作り続けます。
(金子製麺 四代目 金子貴司)
2019年『Life』380号

(上)契約栽培の麦畑
(下)低速回転の製粉機

金子製麺
季穂地粉餃子の皮
小麦の味を引出す多加水熟成製法により昔ながらの深い味わい。
伸びがあり破れにくく包みやすい。
金子製麺
季穂地粉シュウマイの皮
埼玉県産地粉に北海道産強力粉で作った皮です。
小麦の風味と加熱後のぷりぷり感が◎。