伊予蒲鉾(愛媛県西予市)

伊予蒲鉾は、八幡浜市のかまぼこ製造業者4社が経営統合し、1972年に私の父が組合長となり設立した伊予蒲鉾協業組合を母体としています。その頃は作れば売れる時代でした。八幡浜魚市場には、多くの魚が水揚げされ、かまぼこ屋は、毎朝魚市場に出て原料魚をセリ落して仕入れていました。
私は今でも毎朝魚市場に出ていますが、自分の目で見て魚を仕入れるかまぼこ屋が少なくなりました。全国的にみても、そのような原料の仕入れ方をするかまぼこ屋は珍しいようです。それは、今から60年ほど前に発明・開発された冷凍すり身の登場により、生魚を使わずに煩わしい一工程を省けてかまぼこができるようになったためです。
冷凍すり身の長所は、何よりも天候に左右されずに安定供給され、価格も品質も安定しているということです。逆に短所は、かまぼこ原料としての商品価値を高めるために魚肉を白く仕上げようとして、過度の晒し(かまぼこ原料つくりの一工程)で旨味成分まで洗い流してしまっていることです。そのため、冷凍すり身だけで製品を作ると、弾力はあるが魚の旨味のない商品になります。また、冷凍による品質劣化を抑えるためにすり身に糖分を5〜8%ほど添加しています。冷凍すり身100%で製造するメーカーが増加し、全国的にも甘口の商品が多くなっているのはこのためです。また、旨味を補うために化学調味料や魚肉エキスなど添加物や塩分を多用するようになりました。
私たちは、以前より保存料、化学調味料、着色料不使用の商品を作っていましたが、昨年末より、関西よつ葉連絡会さんのご要望にお応えするべく完全無添加のかまぼこの製造に取り組みました。それは、今まで作っていたものからみて、「味がはっきりしない」「何か物足りない感じがする」と最初感じました。しかし、徐々に添加物のなかった時代の本物のかまぼこはこういうものではなかったかと思うようになりました。そして現代の甘い、塩辛い、脂っこい、濃い味の食品に慣れてしまうと繊細な旨味を感じる味覚が麻痺してしまうのではないかと心配にもなりました。一般的な量販店では、安売りで顧客の獲得競争が行われ、練り製品もその対象として扱われ、コストを下げるためさまざまな増量剤や添加物が使われています。その一方でメーカーは徐々に経営的に疲弊しています。

私たちは、これを機会に皆さまに納得していただける、必要なものだけで作るシンプルで素朴で安全安心なかまぼこづくりに研究、努力していく所存です。今後ともよろしくお願いします。
(伊予蒲鉾 三好一臣)
2019年『life』220号

毎朝、生の魚をさばくところから作業は始まります。
伊予蒲鉾
はも皮ちくわ
八幡浜で水揚げされた淡白で上品な旨味のあるはもで
皮ちくわを作りました。
伊予蒲鉾
板かまぼこ
イトヨリすり身と愛媛県産のエソを使用した魚の風味が
感じられる、やさしい味のかまぼこです。