今西酒造は、日本酒発祥の地、奈良県桜井市の三輪にて創業350年。三輪で現存する唯一の酒蔵です。
三輪といえば、国のはじまり、仏教伝来の地、相撲発祥の地、そうめん発祥の地など、歴史・文化・食に携われば耳にすることも多いでしょう。酒造りにおいても、日本書紀・万葉集で『うま酒三輪』と詠まれ、三輪の枕詞が「酒」になっていることからも、古来、酒の聖地であることは想像に難くありません。また、日本最古かつ、酒の神様としても有名な大神神社(おおみわじんじゃ)もあります。
そんな環境のもと、長く受け継がれる発酵技術を活かしてつくっているのが「三輪・今西家のなら漬」です。契約農家様から直接仕入れた奈良県産のキュウリと自社の酒粕を使用し、蔵の女将が自らの手で何度も丁寧に漬けかえをして作ります。コンセプトは「無添加・安心・手作り」。酒造りの副産物である酒粕と塩、砂糖以外は使っておらず、自社製造、手作りにこだわった商品です。
製造工程は次の通りです。
キュウリの洗浄 → 塩漬け → 約7日間漬け置き → 水切り →酒粕床漬け(1回目)→ 約1ヶ月後新しい酒粕床に漬け直し(2回目)→ 約3ヶ月後新しい酒粕床に漬け直し(3回目)→→約2ヶ月後新しい酒粕床に漬け直し(4回目)→→約2ヶ月後以降袋詰め → 出荷
なら漬けは何度も新しい酒粕床に漬け直すことで酒粕の旨味をキュウリに浸透させていく、たいへん手間のかかる漬物です。そして長く漬け込むほど旨味は多くなりますが、逆にしつこさやエグ味、甘辛さが強くなりすぎてしまいます。そこで私たちはあっさりと食べやすく、かつ旨味がある仕上がりを求めて、約8ヶ月〜1年というあえて短めの漬け込み期間で仕上げています。
もう一つのこだわりは、塩漬け〜床漬け、漬け直しまで全工程一貫して自社製造という点です。一般のなら漬けは塩漬け〜床漬け、何度かの漬け直しは全て外部委託していて、最終の漬け直しだけを自社で担当する、という場合がほとんどです。特に一番手間がかかる原料キュウリの下処理・塩漬けを自前でやっているところはほぼ皆無です。当蔵のように全工程を全て自社でするところは、残念ながら非常に珍しいのです。
手間隙かけた分、味がしっかり染み込みつつも、しつこさのない旨口で、酒の肴やお茶漬けにぴったり。他にもマヨネーズ・卵と和えて和風タルタルソースにしたり、クリームチーズと混ぜてワインのお供にと、アイデア次第で幅広くおいしくお召し上がりいただけます。さらに残った粕で魚を漬ければ、1日で本格的な旨味たっぷりの粕漬けができます。最後まで余すことなくご活用いただける逸品のなら漬け。当蔵に代々伝わる味をどうぞお楽しみください。
(今西酒造 今西 将之)
2017年『life』200号
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