花堤(はなつつみ)(埼玉県熊谷市)

埼玉県熊谷銘菓の「五家宝」は、草加市の草加煎餅・川越市の芋菓子と共に埼玉の三大銘菓です。「五嘉棒」の名で江戸時代文政年間(19世紀前半)に熊谷で売り出されたのが始まりです。その後、「五嘉宝」「五箇宝」と名前が変わるなか、「五穀は家の宝である」という祈りを込めて現在の「五家宝」と呼ばれるようになりました。
中山道の宿場町であった熊谷は、五家宝の主原料の良質のもち米がとれ、田のあぜではきなこの原料大豆が、さらに水飴の原料大麦も多く収穫されていました。熊谷のそうした豊かな環境が五家宝を生み出したと言えます。
「五家宝」の作り方は蒸したもち米をのして細かく砕いて煎り、あられ状にしたものを「種(たね)」にします。その種を砂糖と水飴とで固めて棒状(円筒状)にし、きな粉を水飴で練って作る皮を巻き付けて「玉」を作ります。それをより板(のし板)で細長くのばしてから切り、きな粉を表面にまぶしてできあがりです。今も昔から継承されてきた独特の手作り技法によって、熟練した職人の腕や勘に頼りながら、家内工業的に作られています。
花堤は1905年創業で、もともとは「種」ときな粉製造を本業としていました。その技術を生かして、国内産の厳選されたもち米や大豆を使って種づくり、きな粉づくりから最終製品まで一貫生産をおこなっています。加えて熟練の職人の技と心のこもった手作業により、香ばしいきな粉の風味とサクッとした歯ごたえが特徴です。
よつ葉の皆さまにお届けしている「一番糖 五家宝」はそのなかでも、原材料のきな粉に使う大豆を埼玉県の在来大豆「借金なし」(熊谷産 特別栽培)に、砂糖をてんさい糖の一番糖に、仕上げ時に使用する水飴を麦芽水飴に変更して特別仕様で製造しています。上質な原材料を使用することで、よりやさしい甘さと在来大豆のきな粉ならではの味わいが際立つ仕上がりになっています。
私たちは、120年にも及ぶ伝統をしっかり受け継ぎながら、五家宝をもっと身近にご利用いただきたいとの思いから、原料からの一貫生産のメリットを生かし、天然醸造醤油や海水から採取した天日塩を隠し味に使うなど、

さまざまなフレーバーの五家宝を開発しています。職人の技の伝承とともにこの熊谷銘菓を次の世代へ受け継いでいきたいです。
お茶、コーヒーのひとときに、また、贈り物としても幅広くご利用いただければ幸いです。
(花堤 中條弘行)
2020年『Life』450号

「玉」をより板で細長く伸ばしているところ
花堤
一番糖五家宝(塩)
もち米で作った種をきなこと麦芽水飴の生地で包みました。
海の精「ほししお」の塩味が甘味を引き立てます。
花堤
一番糖五家宝(醤油)
もち米で作った種をきなこと麦芽水飴の生地で包みました。
本醸造醤油を隠し味に加えコクのある味わいに。