フードアンドスパイス(東京都足立区)

フードアンドスパイスは、大学卒業以来、香辛料一筋に携わってきた私の父が、「こんな商品ができないか」というお客さまからの要望を実現しようと1977年に立ち上げた会社です。そんな要望の中で、市販の練りからしや練りわさびは添加物も多く、これを何とかしたいと商品開発に乗り出しました。今から20年以上前のことです。
最初に開発をしたのはからしです。からしはかつて日本の各地で栽培されていた菜種の一種で、和からし菜のタネを臼で挽いてからしに加工し、水で溶いて練り、辛さを味わってきました。ところが第二次大戦後、和からしの菜種の栽培はされなくなって、今ではほとんどの原料産地はカナダからの輸入です。
冷凍からしの商品開発は、そんな現状を踏まえて、何とか国産の和からしで製品を製造したいという思いから出発しました。そして、当時の和からしの菜種の栽培は一部地域だけで量も限られていたので、まず原材料の栽培の取り組みから始めました。
しかも、ほぼ流通していない作物を一から栽培するのは分からないことだらけです。生育(かつては日本各地で栽培されていたとはいえ、今の温暖化で生育可能か?)、収穫(だいたい9月頃に収穫ですが台風のおそれがあります)、乾燥(カナダでは収穫後は自然乾燥で済みますが、多湿の日本では乾燥させないと傷んでしまいます)など、入荷・加工するまでさまざまなハードルがありました。さらに、この20年ほどの間に気候の変化もあり、また同じ和からし菜でも産地によって味が違うこともあり、産地選びを考えた結果、現在は北海道の数軒の農家からタネをいただいています。
そうして完成したからしを食べてみて驚きました。なんと国産からしの方が甘みがあり、味にコクがあり深かったのです。日本で栽培したからしの方が私たちの舌に合うのかもしれません。市販のカナダ産原料を使った添加物入りのからしとは、ひと味もふた味も違う商品です。
次に作ったのが
冷凍わさびです。世の中にはチューブタイプのわさびが多く出回っていますが、無添加のもの、本わさびだけ使用した製品はほとんどありません。風味・辛みが持続せず日持ちがしないため、辛み成分や保存料などの添加物などを加え、西洋わさびをブレンドして販売されていることが一般的です。そこで、何とか本わさび100%で無添加のものを作りたいと考えました。
本わさびは、細かくすりおろすことで香りと辛み、そしてほんのりとした甘さが出ますが、それは一瞬です。その一瞬のおいしさを、添加物を使わずにご賞味いただけるか。すりおろして直ぐに急速冷凍パックしてみたらどうかと試行錯誤した結果、国産本わさびのみ使用、小分けの使い切りタイプの無添加冷凍わさびが実現したのです。

その後、同シリーズで、
国産生姜や
国産にんにくを使った商品も開発しました。これからも地味ではありますが、国産原料を使った“和のスパイス”を丁寧に作り続けていきたいと思います。ぜひ一度ご賞味ください。
(フードアンドスパイス 錦戸恵子)
2019年『life』60号

(右)北海道の和からし菜畑。
(左)見た目は一般の菜種と変わりません。

山忠わさび
国産からし
稀少な国内産のからしです。使いやすい分包タイプ。
原材料は辛子、酢、食塩のみ。
山忠わさび
国産おろし本わさび
国内産の本わさび100%で無添加。
使用の直前に解凍して速やかにお召し上がりください。
山忠わさび
国産おろしニンニク
良質の国産ニンニクをすりおろして冷凍。
料理や薬味にどうぞ。産地は青森が中心。無添加。