ファゾーリ・ジーノ(イタリア・ヴェネト州)


もうすぐ終わる2020年は、たくさんの出来事が起こった異例の一年でした。1月、2月は、どちらかというと楽観的で、ワインの出来の良かった昨年に続き、さらに良いワインが届けられる年になるだろう、と思っていました。しかし3月、ウイルス感染の拡大とロックダウンによって、突然の変化がもたらされました。世界中どこも、このような不測の事態に対する備えがなかったように思います。人々の記憶というのは短く、そして今を生きる世代の多くが、この新型コロナウイルスのような危機的状況を経験したことがありません。
この第一波はすべてを台無しにし、あらゆる活動があらゆるレベルで崩れていく恐怖を、人々に植え付けました。ある日突然自宅待機になり、すべての仕事はストップし、世界もストップする、とてもショックな出来事です。ただ、その頃同時に、ぶどう畑の静寂のなかで考えたことを今でも覚えています。突然、車も、飛行機も、働くための機械もすべてなくなって、空気と水は澄み、動物たちは再び自分たちの場所を取り戻していっている。自然は、私たち人間が思う以上に本当に強い。だから人間は、それを支配し続けようと画策する代わりに、人間も自然の一部であり、その強さは自身の中にもあることを理解する必要があるのではないか。人間の役割は自然の見張り番(見守って適切に管理するという役割)であるということ。私たち人間がそれを理解した時、種の進化のような、大きな一歩を踏み出すことができるでしょう。
危機的状況は瞬く間に広がり、今ある私たちのシステムは脆いものであると明らかになりました。経済不安もありますが、それはコロナ禍以前に起こっていたことです。新型コロナウイルスは景気減退を加速、悪化させることはあっても、決して根本的な原因ではない。では、この危機を乗り越えられるのは誰か? 高品質、適正な価格、エシカルな物、買ってくれる人との関係性…ひとつひとつていねいに誠実に向き合える生産者が、生き残っていけると信じています。
今なおコロナ禍にあり、衛生的な問題、人に与える身体的、精神的な問題、経済不安、まだわからないことで満ちています。そして、私たちはこのすべてのネガティブな事項から、考え、学ばなければいけない。コロナって何だろう? 誰が作り出したのか? 私たち人間が、作って作って作り続けて、自然を破壊し続けたことが原因なのでは? これを続ければ、これから先、もっとひどい状況に陥るのでは? 今回のパンデミックは、私たちへの警告です。もし今起こっていなければ、私たちは立ち止まって考えることはなかったでしょう。「持続可能で環境に配慮した、そして私たち人間が共生していける社会とは?」と。
まだ時間はかかるだろうけれど、状況が改善していくことを願います。そして、みんなおいしいワインを片手に、語り合える日が戻ってきますように。
(ナタリーノ・ファゾーリ、アマディオ・ファゾーリ)

アマディオ(左)とナタリーノ
2020年『Life』510号
ファゾーリ・ジーノ
無添加ヴェロネーゼ赤2018
酸化防止剤無添加。
品の良い自然な甘味と程よいタンニンを持つ赤ワインです。
やや辛口 渋味:やや強
※これはお酒です
ファゾーリ・ジーノ
ボルゴレット・ソアーヴェ白2017
モモやリンゴを思わせるフルーティーな香り。
程よい酸味で親しみやすい白ワイン。
やや辛口 酸味:中口
※これはお酒です