遠忠食品(埼玉県越谷市)その2

■原料の高騰・量の確保が難しくなってきています
海の環境、目に見えないところで変化しているのではと感じています。昨年、東京湾の海苔入札が不漁のため、秋の一番大事な入札が、2回中止されました。詳しい原因は解りませんが、水温の上昇、原発が止まっている状態の中、東京湾の周りの火力発電所の温水が原因なのか? 栄養塩が足らないのか? 昔の汚染が原因か?
アサリもさっぱり、採れない状態が続いています。東京湾で唯一採れていた、ホンビノス貝も青潮にやられ、収穫量が減少しています。今後の漁師さんたちの収入の確保、後継者を育てられる水揚げが重要であると考えます。一次産業の応援は不可欠です。
■働いてくれる方の確保
東京の最低賃金が918円になりました。日本の人口が増える前提がなくなり、高年齢化で工場で働いてくれる仲間が増えていきません。日本の製造業が衰退していき、食品の製造現場でも機械での工業製品化やAIの導入など、資金があるところだけが残り、中小零細企業が衰退していくのでは? と懸念しています。
■食料品の廃棄
日本は、食糧の半分以上を輸入に頼っているのに廃棄している食品が多すぎます。日本に食糧を輸出している国は、人口が増えている国が多いと感じます。そうした輸出国において食料が足りなくなり、日本に輸出しなくなったら、途端にどうにもならなくなります。食品の廃棄を減らし、現在38%と言われている食糧自給率を上げることが、緊急課題だと思います。
とにかく水産加工の現場では、ある程度のまとまった原料を確保することが大切なのですが、それがなかなかできなくて困っているというのが、全国各地共通の悩みです。その中でも私たちのような中小は、小さいなりにできることがあるのではと思ってやっています。それは小回りが効いて製造できること。例えば地元、前浜の漁師さんや生産者とできるだけ頻繁に連絡を取って、その時に採れたものを少量でも買い続ける。そうすることで信頼関係ができていきます。また、10年以上続けている「お台場」での海苔づくりなどを通じて、少しでも東京湾、前浜のことに興味を持ってもらうように活動を続けていきたいと思います。

これからも私たちは製造方法や原料確保において仲間同士でネットワークを組んだり、こだわりぬいた理念をもとに頑張っていきます。よつ葉の皆さんとも協力し合いながら少しでも国産の食べものを広げていきたいです。
( 遠忠食品 宮島 一晃)
2017年『life』500号

お台場の小学校で続けている海苔づくり
遠忠食品
揚ごぼう甘酢
国産のごぼうを細切りカットし、油でサッと
揚げてから甘辛いタレでからめました。
遠忠食品
おにぎり昆布
おにぎりの具に使いやすいサイズにカットした
昆布の佃煮。直火釜炊きならではの味わいです。