趙さんの味 (宮城県仙台市)
日本の材料にこだわり、安心して食べられる“本物のキムチ”作り
「趙(ちょう)さんの味」の趙は、私の母の名前です。母が韓国南東部の慶尚道出身の祖母の味を私に伝えた味がそのルーツです。本格的な韓国キムチの製法そのままに、できるだけ日本の材料にこだわり安心して食べられるキムチを作り続けています。
私は日本で生まれ育ったため、韓国の文化と日本の文化の入り混じった中で育ちました。食事についても同じで、当たり前のように食べてきたものが韓国のものだった…、ということに気付いたのは随分後になってからです。そんな私がこのキムチ作りを受け継いだのは20数年前。初めてスーパーでキムチを買って食べた時はショック! でした。韓国の人が作るキムチしか食べたことのなかった私は、こんな、おもちゃのような味を「これがキムチだ!」と思われているのか? と思いました。
そんな時、地元の生協さんとの出会いから“本物のキムチ”に挑戦し始めました。“添加物を使わずおいしいキムチを作る”という思いでしたが、なかなかおいしい! と思うところまではたどりつかず、ある時は、干しシイタケを使ってみたらキムチが黒くなってしまったりと失敗の連続でした。それほど従来のキムチ作りは、添加物や化学調味料と切っても切れない世界だったのです。そこで“化学調味料を使わずにおいしくするには、昔の製法に戻るしかない”と思い、だしを取ることにしました。ただ、相当な旨みでなくてはならないと考え、ほたて、いか、昆布、えび、かつおぶしをじっくり煮出しました。
それでももう一つ足りない。魚醤です。韓国では、いわしやきびなごなどの魚醤を使うのですが、私は宮城に住んでいて、地元にこだわりたかったので探しまわって見つけました。それは、創業180年のこだわりの醤油屋さんが作っていた鮭の魚醤です。普通魚醤は塩で熟成させるもの。しかし、この鮭の魚醤は醤油麹で熟成させているのです。味もすっきり、生臭さは少なく、何より香ばしい香りが特徴です。
東日本大震災から4年が経ちました。工場を建て替えて完成したのが震災の1カ月前。その新工場は津波で流され全てがダメになりましたが、たくさんの皆さんの応援で、工場移転、再建築、再開と、ここまできました。「趙さんのあのキムチが食べたい!」との声で、真面目に取り組んできたキムチ作りに間違っていなかったと、答えが出たと思いました。これからも、安全でおいしいもの作り、こだわりを持って進んでいきたいと思います。
(趙さんの味 李香星(イー・ヒャンソン)