熊本地震から約1年が経ちました。未だかつてない地震の恐怖、そして人生で初めての避難生活を経験しました。
私個人は、約半年間に及ぶ避難生活の中で精神的な重圧もあり、心臓病などで入退院を4回ほど繰り返しました。そして薬草園の方は裏山が大崩落し、店舗・加工場・倉庫すべてが使えない状況となりました。今後なすすべもない絶望的な状況で、入院中は茫然自失し眠れない日々が続きました。そんなある日、「何をしておる。原点に立ち返り前を見よ」と幻の声が聞こえた気がしたのです。ハッとして何とかしなければと思った時、ふと阿蘇神社の門前町周辺の風景が脳裏に浮かんできて、「ここへ行きたい」と思わず口走りました。実は震災前から、阿蘇の原点でもある阿蘇神社近くで、いつかお店を構えたいという思いがありました。そんなこともあり、阿蘇神社も地震で崩れてしまったけれど一緒に復興していきたいと、強く思うようになりました。
その後、念ずれば通ずのごとく、運よく門前町商店街内の空き店舗を借りることができ、無事2017年1月1日に開店しました。震災以来休業中だった販売活動が再開でき、思わず涙が込みあげて止まらない感動を体験しました。そして正月三が日は多くの観光客で賑わって順調な滑り出しができ、阿蘇神社の恩恵に改めて感謝の念を抱きました。
一方、製品づくりの加工場の方も、この店舗の近くに土地を取得することができ、現在着工に向けた準備中で、こちらは今秋10月末頃完成予定です。阿蘇の湧水に恵まれた地での製品づくりは必ず品質向上につながると確信しています。
被災した南阿蘇の薬草園の方は、山の奥にある畑は無事で、来春には全面的に移植作業などおこない、畑を縮小してでも生産は続けていく予定です。また新加工場の近くでも新たに薬草園形態で活動したいと思い、栽培できる場所を探しています。これまでは薬草園、加工場などの生産体制、そして売店などの事業全体を一つの場所でおこなっていましたが、今後は広範囲で生産体制を整え、販売場所及び学びや体験なども充実させ、これまで以上に多くの人に日本の民間薬草文化を伝えていきたいと思っています。
震災により文字通りゼロからの再出発です。ここまで来られたのも、ひとえに多くの方々のご支援あってこそだと本当に感謝しています。より良い商品づくりに専念し、社員一同力を合わせて精一杯復興に向け前進してまいります。今後ともご支援くださいますよう何卒よろしくお願い致します。
( 阿蘇薬草園 井澤 敏)
2017年『life』180号
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