タンポヤ林


「きりたんぽ鍋」は、炊いたご飯をすり潰して木の棒に棒状に塗りつけて焼いたものを地鶏、ねぎ、きのこ、ごぼう、せりなどを入れた鶏ガラのスープで煮込んだ鍋料理で、秋田県北部の郷土料理です。もともとはマタギと呼ばれる猟師の携帯食で、昔はきりたんぽと野菜を携帯して山に入り、現場で獲れた肉と一緒に煮込んで食べたそうです。
現在は新米が収穫できる秋から冬にかけて食べられる鍋料理で、秋田産のあきたこまちなどの新米、日本三大地鶏の一つである比内地鶏、根をつけたままの地元産のせり、山で採れた舞茸など地元の食材をふんだんに使って作ります。鍋に入れられたきりたんぽは、野菜や鶏の旨味が凝縮したスープが染み込み、格別の美味しさになります。
このきりたんぽ、50年ほど前までは各家庭で手作りされていましたが、現在は手作りはせず、ほぼお店で購入する方が多くなっております。また、作る工程で焼いて保存性を持たせるのですが、それでも保存が効くのは約3日ほどです。焼き過ぎると水分が抜けて硬くなり干しご飯のようになって、鍋に入れてもなかなか柔らかくなりません。今では保存食というより、できたてを食べるようになっています。
タンポヤ林の始まりは、祖父がうどんの製造の仕事に就いたことがきっかけです。60年ほど前に現在地に引っ越し、秋はきりたんぽ製造、冬から春までは物産展に出店という形で事業化してきました。始めた当初は近所の方を5〜6人雇い入れて、手作り、炭火焼きで作っていましたが、40年ほど前から通年で製造するようになり、機械を導入しました。
きりたんぽの作り方は、お米を蒸して程よくつぶし、棒に巻き付けて焼き上げる、というシンプルなもの。しかしだからこそ、天気や気温、季節に応じて炊飯の水加減やきりたんぽを焼く火の調整をこまめにすることで、モチモチとしたきりたんぽに仕上げています。また、原材料は秋田県産あきたこまち100%、本場比内町で160日かけて育て上げられた比内地鶏のガラを使った特製スープが自慢です。米どころの秋田で米を美味しくいただくための知恵から生まれたきりたんぽを、この特製地鶏スープで召し上がりください。
(タンポヤ林 林保誌)
2022年『Life』40号

林保誌さん(後列左)とスタッフの皆さん
タンポヤ林
きりたんぽ
蒸してつぶしたお米を棒状にして焼き上げました。鶏肉やきのこ、季節の野菜と一緒に鍋や汁物に。
タンポヤ林
比内地鶏ガラスープ
秋田・比内町で育てられた比内地鶏の丸肉とガラをふんだんに使いじっくりと煮込みました。3倍希釈が目安。