ふるさと 海士


ふるさと海士は、島根半島沖合約60kmの日本海に浮かぶ隠岐諸島のうちの一つ、海士町にあります。対馬海流の影響を受けた豊かな海に囲まれた隠岐島は、海産物の宝庫です。しかし島で獲れた海産物は本土の市場に運ぶのにフェリーを使わなければならず、時間がかかって鮮度が落ちてしまうという問題がありました。これを打破するために町の投資でCAS 凍結システム※を取り入れて第三セクターとして2005年設立されたのが(株)ふるさと海士です。この技術により、島で食べる鮮度と同じものを年中いつでも全国の皆さんにお届けできるようになりました。
私たちには新鮮な海産物を全国へ販売することで「外貨」を稼ぐ、そして加工場を併設することで島に雇用を生むという重要な使命が課せられています。現在では全国の居酒屋や数多くの飲食店と数多くの取引があり、さらにはアメリカ、中国、マレーシアなど海外にも販路を広げています。そして、Iターンも含め約20名のスタッフが働き、島の雇用創出にも一役買っています。
商品づくりでの一番のこだわりはやはり鮮度です。CAS 凍結システムはすごい技術ですが、鮮度の悪い魚の鮮度が良くなるわけではありません。鮮度の良いものを凍結してこそ力を発揮するシステムです。例えば、私たちの代表的な商品のひとつである「朝どれ白いか」(剣先いか)の漁は、夜から明け方にかけて行われます。朝方帰港して水揚げした白いかは9時頃には自社工場に運搬され次々と加工、凍結していきます。この釣りあげてから凍結までのスピード感が高鮮度を保つ秘訣です。
一方で、地元漁師さんたちともやり取りを重ね高鮮度・高品質を保つためのルール作りをしています。例えば、漁師さんは釣り上げた白いかを船上で手早く氷を入れたイカ箱に並べていくことで、水揚げまでの鮮度保持に努めています。そうした漁師さんの努力を支えていくために、私たちは大漁の時でも仕入れ価格を安く買いたたくことは決してしません。安定した価格で仕入れることで漁師さんたちの収入安定にもつなげています。そして実際、島へのIターン者の中には、漁師として生計を立てておられる人もおり、若い担い手も出てきています。島の海産物を確かな品質と価値で皆さんのもとへお届けし、そして地元へ還元することが、私たちの役割だと考えています。
コロナ禍のなかで旅行に行くこともままならなくなってしまいましたが、島で食べる鮮度、味を皆さんにお届けすることで、少しでも隠岐の気分を味わっていただければと思います。

(ふるさと海士 奥田聡)
2021年『Life』270号
※ CAS 凍結システムとは素材の細胞を傷めず凍結することで解凍後も獲れたての鮮度で蘇るという技術です。

水揚げされた白いかを手早く加工
ふるさと海士
隠岐の白いか刺身用(剣先いか)
島根県隠岐島近海で獲れた新鮮な白いか(剣先いか)
を手作業で手早く加工して開きにしました。
ふるさと海士
隠岐のシマメ(するめいか)
島根県隠岐島近海で獲れた新鮮なするめいか
解凍後、生で食べられます。