うずしお食品 (徳島県鳴門市)


鳴門わかめは、瀬戸内海と紀伊水道の潮流がぶつかる「鳴門の渦潮」で知られる鳴門海峡で育ち、色艶がよく、茎ごと食べられて、柔らかいなかにもシャキシャキ食感と味と香りが自慢の徳島を代表する海産物です。
もともとわかめは寒い時期に大きく成長する海藻です。しかし、昨今の高水温の影響や海水中の栄養不足など急激な海洋環境の変化のなかで、生産量が減少し、また品質面にも変化が生じています。特に今年の鳴門わかめは、色が浅いものが多く、残念ながら商品になる割合が低くなっています。
なお、わかめは決して海だけで育つものではありません。海と山の豊かな環境が一体となって、美味しいわかめが生育します。鳴門海峡の景観、きれいな海は青々しく目を見張る程素晴らしく、観光客の皆さんに喜ばれていますが、一方でその透明度の高さは決して栄養豊かな海とは同じものではありません。もちろんマイクロプラスチックなどは排除されるべきですが、適度に台風などによって、海底の栄養分がかき混ぜられ、山からの栄養分が海水と混じり合うことで初めてわかめに必要な栄養が取り入れられるのです。
私たち、うずしお食品は1977年の創業以来、徳島県産鳴門わかめを自社でボイルから加工・販売まで一貫して行なってきました。徳島県鳴門わかめ認証制度の第一号として適正な食品表示とトレーサビリティーに取り組み、さらに現在は徳島大学や徳島県水産研究所と共同してわかめの品質向上に積極的に取り組んでいます。そんななかで、これまで当然のように廃棄されていた規格外部位を活用して、わかめの栄養そのままにパウダーとして再生させたり、わかめの残渣を肥料や飼料として活用することで水産だけではなく、農産、畜産とも協力しながら、循環型社会への取り組みも行っています。
一方で、私たちは独自技術の開発により、2017年冷凍わかめを商品化しました。これは、鳴門わかめを収穫後、ボイルしてすぐ「そのまま」凍結、使用する時も解凍だけで「そのまま」食べられて、海から食卓まで限りなく「そのまま」にお届けする商品です。これまでの塩蔵わかめや乾燥わかめでは味わえない、旬の季節に浜茹でされた鳴門わかめ本来のコシのある食感や風味を再現しました。従来なかった商品として、海外での需要も増えています。
海は命の糧を得る源であると同時に、文化や景観も形成してきました。わかめ業界は今、岐路に立ち予断を許さない状況が続いています。私たちは、このことにしっかりと向き合って、従来に囚われず、新たな発想で活動や商品開発、発信を行っていきたいと思います。一次産業を担う生産者と消費者の橋渡役として国産水産物の良さを多くの人に伝えることで、わかめ業界に資することができればこれ以上の喜びはありません。

(うずしお食品 渡部智之)
2021年『Life』310号

うずしお食品
鳴門の冷凍わかめ
鳴門水域で獲れたわかめをボイル後、急速冷凍しました。
塩蔵や乾燥わかめでは味わえない風味と食感。
うずしお食品
鳴門の天然わかめ
鳴門海峡で獲れた天然わかめを湯通しして塩蔵しました。
柔らかでコシのある食感。お刺身としてもどうぞ。