野菜をもっとおいしく、楽しく。
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もともと漬物は、それぞれの土地で採れた野菜を備蓄するための保存食として、先人たちの知恵から生まれた伝統食です。ところが、最近は食習慣と家庭の台所環境が変わってきたこともあり、日持ちする深漬よりも、低塩度で漬けた浅漬をサラダ感覚で食べることが多くなってきました。私たちも、元来は足かけ3年の歳月をかけて漬け込む家伝のみりん奈良漬の製造メーカーでしたが、時代の変化に合わせ、現在は旬の素材を用いた、サラダと同じ程度の塩分である塩度1.5〜2% の浅漬を中心に、季節ならではのお漬物を製造しています。
![]() 朝どりのみず茄子が、 その日のうちに届きます |
季節の素材を使用したお漬物のポイントは次の3点です。即ち、@素材そのものの鮮度がよく、味がよいものであること(浅めに漬けるため、素材そのものの味が出やすい)。A手作りの良さを生かすこと(目で見て、手でさわりながら、素材を吟味して加工することが大切)。B漬け床に過度な調味をせず、素材のおいしさを引き出すようにする(添加物の使用を極力避けて、厳選した調味料を使うこと)。
今回、ご紹介するみず茄子漬けは、味と食感が何よりの特徴です。生のみず茄子は皮が薄く、果肉はジューシーな感じで、生のままかじるとほんのり甘みがあって、茄子によくあるようなアクはほとんど感じられません。私たちはこのみず茄子を、契約をしている三重県の生産者から、毎回、朝どりのものをその日のうちに運んできてもらっています。
この茄子を、ひとつずつ包丁で切ることにも意味があります。漬物らしい独特の食感は、素材と塩や調味液の間の浸透圧の関係から生まれます。野菜から適度に水分が抜け、そこに調味液が浸透することで、パリパリ、シャキシャキの食感になるのです。みず茄子を包丁でスパッと切ることで、断面の細胞が押しつぶされることなく、漬物になった時の食感がよくなるのです。
浅漬の魅力は、その鮮やかな彩りにもあります。最近は野菜が持つ自然の色素や香味成分が、第7の栄養素、フィトケミカルとして注目を集めています。その点、加熱調理をしない浅漬は、野菜そのものの色素成分が残りやすく、そうした野菜の栄養素を摂るうえで、効果的な方法と言えます。特に茄子の色素であるアントシアニン(主にナスニン)は、ゆでると水に溶けだしやすいので、浅漬はその点でもおすすめです。
![]() 若菜の皆さん。 前列左から2番目が山田さん |
浅漬は、鮮度のよい原料でなければならず、またあまり日持ちがしないこともあって、深漬とは異なり、扱いが難しい面もいろいろあります。しかし、「野菜をもっとおいしく、さらに楽しく」をテーマにしながら、これからも、皆さまに喜んでいただけるような、さらに魅力的な漬物をお届けしていきたいと思います。
(若菜 山田耕平)
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