世界最高品質をめざす土佐のベルガモット
スタジオオカムラ(高知県高知市) |
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みかん農家の未来に向かっての挑戦
温州みかんは高知県でも昔から栽培されてきましたが、輸入果実に押されるなど、相場の下落と需要の低迷に苦しんでいます。加えて温暖化が進行する中で、栽培適地とされてきた高知県でも今後は質の高い温州みかんが栽培できなくなるという懸念が生じています。データによると年間平均気温があと0.5度上昇するとそうなると言われているのです。みかん農家の将来を考えると、代替品種の開発が望まれていました。
爽やかな柑橘の香りを広く伝えたい…
柑橘は果皮に含まれる香りはもちろん、季節に応じて花、葉、種類によっては枝まで爽やかな香りを放ちます。摘蕾(てきらい)作業の季節の花が開花する一瞬の香りなど、農家さんたちは「皆さんに体験してもらいたい」と口を揃えて言います。そして私たちの地元春野町は清流仁淀川の流域に位置し、上流域では古くからお茶も盛んに栽培されています。この紅茶と合わせて柑橘の香りを伝えることはできないか。そんなところから、約5年前に近所の農家さんと話し合って国産アールグレイを開発することになり、原料となるベルガモットを栽培してもらうことになりました。
農家はイタリア・カラブリア地方のベルガモットを目指す
![]() 5年の歳月をかけて 育て上げたベルガモット |
国産ベルガモットは、約20年前に全国の果樹試験場に配布され研究が始まったと聞いています。しかし、いざ栽培しようと思って探しても実際に栽培している農家はほとんどなく、瀬戸内のごく一部で栽培されていただけでした。そこで、まず流通していた苗木を入手したりして、具体的に栽培を始めたのが約4年前。それから、数少ない栽培農家を訪れてさまざまな情報を収集し、接ぎ木となる台木を改良したり、栽培方法も工夫して、ようやく現在の品質に到達したのです。目指すは、世界最高品質といわれるイタリア・カラブリア地方のベルガモットです。
最高品質の香りの抽出を目指す
しかし、ようやくベルガモット果実を収穫できるようになっても、当初は花や果実から思うようなエキスを抽出することができませんでした。研究を進めていたところ、約3年前に高知県内メーカーが独自開発した減圧蒸留装置との出会ったことにより最高品質の精油が可能となりました。それまでの水蒸気による抽出とは違って、沸点をコントロールすることができるので、低い沸点で爽やかな香りをより多く抽出できるようになったのです。こうして抽出された精油から生まれたのが『ベルガモットスパークリング』です。
精油や完熟玉ピールの活用
鮮烈な香りを求めるなら未成熟な青玉ですが、完熟玉は優しい香りで味わいも異なります。イタリアやフランスでも完熟のピールを利用した商品は数種類しかないようです。そこで私たちは、国産ベルガモットの特徴をより活かした商品として、現在、完熟のピールの油胞をできるだけ残しフレッシュな状態で楽しめるコンフィチュールなどの商品を開発中で、近々皆さまにお目にかけたいと思っています。
(スタジオオカムラ 蔵田克巳)
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(高知県高知市)
私たちは、地元での営業写真や学校アルバム製作を中心に写真スタジオを営んできましたが、2000年に写真館とベーカリーカフェの複合店舗を始めました。当時はお洒落なベーカリーカフェがそれほどなかったこともあり、順調に店舗を増やしていきました。当初は調理に使う野菜や果物等は当たり前のように市場から調達しており、周りを見渡せば田んぼや畑、ビニールハウスばかりなのに、それらに目が向いていないことに気づきました。
そこで何かできないかと思い、店の駐車場の一角に地元産品を紹介する小さな良心市を始めたのですが、生産者の人たちの悩みや課題を聞く中で小さいながら絆が生まれ、あるトマト生産者の方との出会いが現在の食品加工に向かうきっかけになりました。
その生産者は夏場のトマトのB品の扱いや廃棄処分の問題。また、将来の温暖化に向けての対策などを抱えており、それらを相談していくうちに、私たちの店舗で使用していた輸入ホールトマト缶の品種「サンマルツァーノ種」に着目しました。サンマルツァーノ種は生食用(桃太郎等)と比較してリコピン・βカロテン・ビタミンC・食物繊維などを多く含み、旨味成分のグルタミン酸が2〜3倍含まれており、日本の「昆布出汁」のようにもイタリアでは使用されています。そのトマトを栽培してもらい、私たちが加工・販売していければよいのではないかと。
大事にしていることは、地元の生産物を原材料として、できるだけその有用成分を壊さない独自の製法で化学調味料・保存料を使用せずに作ること。生産者の人たちと協力し、安心してよりおいしく食べてもらえるものをこれからも作っていきたいと思っています。
(スタジオオカムラ 蔵田 克巳)