お米の裏作に“世界一高価なスパイス”
サフランづくりの普及をめざして 

サフラン・ジャパン

(滋賀県野洲市)




海・島・里からの便り
2016年
『life510号』

サフランの花	抗酸化作用のある雌しべがスパイスに サフランといっても一般にはなかなか馴染みがない方も多いと思うが、サフランライスなら「あの黄色いごはんか」と気づく人も多いでしょう。中近東やヨーロッパでは高級な食材=“世界で最も高価なスパイス”として有名で、ギリシヤのクレタ島の壁画にすでに描かれていたほど古くから人類の生活に寄り添ってきた。それはスパイスとして、時に生薬として、時に化粧品として、そして染料として活用されてきたという。日本には明治期に入ってきて、一時期は北海道以外の全国各地で栽培されていたようだ。しかし球根の価格が高いことや開花期間が短いわりに食材として用いる雌しべ部分を採取するのにたいへん手間がかかることから、現在は大分県竹田市でわずかに栽培されているに過ぎない。
 そんなサフランを栽培してみようと思ったのは、ここ数年米価が異常に下がり、TPP 等の動向から水稲農家の将来が真っ暗になってきた中で、今一度サフランの栽培を水稲の裏作で実施してみてはどうかとの思いからだ。
 そこで3年前、国内最大の栽培地で、100年以上の歴史を持つ、大分県の竹田市を訪ねてみた。ここでは、大幅に減少したとはいえ今も40件の農家が水稲の裏作でサフラン栽培をおこなっており、稲作を補うだけの収入を確保していた。しかし何よりの問題点は、「開花させて雌しべを採る」という作業がたいへん手間がかかること。夫婦2人で毎日8時間20日間続けて、やっと10アール分の球根の雌しべが採れる程度だという。そこでもし少しでも機械化が図れれば、もっと多くの農家が栽培に取り組めるのではないかと、機械メーカーやさまざまな人たちの協力を得て、そして2年の年月を経て、この秋ようやく雌しべ採取装置を開発することができた。


左から堀さんと森田さん

 私は、13年前までは転勤族の会社員をしていたが、地方経済を支える産業である農業を支える仕事をするために企業を退社、有機農業を学んだ。南丹市のハピー農園の堀悦雄さんにも出会い、自然栽培のあり方について教えていただいた。今回サフランを栽培するにあたっては、堀さんや滋賀や岐阜の農家仲間や友人、アメリカ・ワシントンの友人にも手伝っていただいて始めることにした。
 サフランの雌しべには天然カロチノイドの一種、クロシンという成分が含まれている。このクロシンは、βカロチンやリコピンなどの他のカロチノイドと同様、抗酸化作用を持っていることが大きな特徴。更に、女性の月経前症候群(PMS)の改善や、血流改善による眼精疲労やうつ病の抑制につながるとの研究もあるそうだ。使い方はサフランライス、パエリア(スペインの米料理)やブイヤベース(フランスのスープ料理)などの他、他のカロチノイドとは違って水溶性なので、お茶にしたり、焼酎に漬けて飲むなど日常的に手軽に利用できる。まずは一度、使ってみて欲しい。 

(サフラン・ジャパン 森田清和)



パエリア・サフランライスなどに
 サフラン・ジャパン
 サフラン
丹波の堀さんが栽培した貴重な国産サフラン。パエリアやサフランライスなどに。
※ お米2合に5〜6本が目安です。

閉じる