オリーブの会

(京都市山科区)


豊富、豊穣とは多様な人が、ものが
共存していること
メンバーや地域の人々との切干大根作りの中から

海・山・里からの便り
2015年
『life50号』

 



 オリーブの会は、現在の社会の中で本来持っている力が発揮できずにいる、心の病を抱えた方々の就労支援をしています。メンバーと地域の方々が一緒に、自然と向き合いながら畑作業を行い、加工品を含めて共同生産を行っています。毎年12月に入ると、オリーブの冬の風物詩、切干大根の生産が始まります。夏の終わりに一生懸命汗を流して種を蒔いた大根が、立派に太り、メンバーや地域の皆さんの手によって切干大根に加工されます。山が人の手では作り出せない色とりどりの自然を見せてくれている中で、太陽の光を目一杯浴びて出来上がった切干大根は何とも言えない甘さで、噛めば噛むほどに、その味が、風景が広がります。
 農に携わっているとたくさんの気づきがあります。蝉が鳴き出した、トンボが飛び始めた、氷が張り出した、もっと単純なところでは、雨が降り出した、風が吹き始めた。そんなことを畑にいると感じることができます。これは何を意味しているのか、その答えはさまざまですが、私は心がすごく豊かになるのを感じます。もちろん反面、そのおかげで仕事がはかどらない時もありますが、そんなの当然ですね、自然がこちらの思い通りになるわけないのですから。「風吹かば吹け、雨降らば降れ」の世界です。おかげで、ありのままを受け入れることができるようになりました。


細切り大根の天日干し

 本来の意味での豊富、豊饒とはなるべく多くの種が共存していることを言うそうです。まわりを見渡した時にどうでしょう。多様な種はまわりにあるでしょうか?  
 ある一定の基準で物事を判断し、切り取ると必ずそこには、切り取られた側が存在し、不必要に扱われてしまう。しかし、多様な人がものが共存していることが、それぞれの個体の豊かな生き方を保障することになります。そんな当たり前の世界が畑には広がり、そこから多くのことを学ぶことができます。

(オリーブの会 勇川 昌史)


自家農園で栽培した
大根を千切りにして天
日で乾燥させました。

オリーブの会

千切り大根
大根を塩と糠だけで漬け、1年以上樽で熟成させた昔ながらの漬物。酸味がしっかり。

オリーブの会

大根の古漬

 

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