毎日飲むものだからこそ
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![]() 西さん一家。右端が西龍介さん |
西製茶所は島根県東部の出雲地方に位置し、1923年に創業しました。この地域は江戸時代後期の大名茶人、松平不昧(ふまい)の影響で茶や和菓子の文化が今も強く根付いています。出雲平野とその周辺の清澄な環境の下、小規模ながら今は3代目と私たち4代目夫婦がお茶の栽培・製造を続けています。
お茶への考え方
すっと体にしみ込んでくる、それが私どもが理想とするお茶の姿です。そこに鮮烈さは乏しいかもしれませんが、だからこそ水のように空気のように日々の生活に欠かせないものになります。毎日飲むものだからこそ、健康な土で育った健康な茶葉からお茶を作ることが基本だと考えています。茶畑で作業をしていると、その中にも生態系があるのだと感じます。害虫もいればその天敵虫もいます。小さな耕運機で畑を耕せばミミズが出ますし、それを狙って鳥が耕運機の後ろをついてきます。私たちは土そのものを作ることはできません。しかしできるだけ生態系がきちんと機能するように、それを守る努力を続けていきたいと考えています。
お茶作り
私たちは出雲地方で栽培された茶葉を原料にして煎茶やほうじ茶、玄米茶などの日本茶、更に国産紅茶の製造も行っています。私たちが国産紅茶の製造を開始したのは、その存在がほとんど忘れられてしまっていた1985年の事。今年でちょうど30年を迎えました。その頃ほとんど姿を消していた国産紅茶を復活させ、皆さまに愛される紅茶を自らの手で作りたいという願いから私たちの試行錯誤が始まりました。紅茶も煎茶も、基本的には同じ茶葉から作られ、製法の違いによりそれぞれのお茶になります。茶葉が持つ「酸化酵素」をしっかり働かせて作るのが紅茶、逆に全く働かせずに作るのが煎茶です。それぞれの製茶作業は非常に神経と体力を使う作業で、最盛期には睡眠時間を削っての作業が続きます。確かに大変ではあるのですがその反面、生葉が少しずつ香りのよいお茶になっていく姿は見ていて美しく、喜びのある作業でもあります。
出西(しゅっさい)しょうが紅茶
![]() 出西しょうがは、比較的小ぶりです |
今回ご紹介する「出雲国産しょうが紅茶」は、地元出雲の出西地区で古くから作られてきた出西しょうがを使った紅茶です。連作障害の強い生姜ですが土壌消毒も行わず、栽培間隔を5年以上あける事で対応しています。出西しょうがの香りは比較的マイルド。だから飽きがこず、毎日のお茶としてご利用頂けます。苦味が少ないのでそのままでも美味しいですが、黒糖やハチミツなど少し甘みを加えてみるのもオススメです。我が家では、このしょうが紅茶を使って作るジンジャーミルクティーが定番です。
お茶は薬として始まり、文化として広がり、そして今は健康を助ける飲み物としても利用されています。皆さまがそれぞれ“お茶のある暮らし”を楽しんでいただけたらと願っています。
(西製茶所 4代目 西龍介)
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西製茶所(島根県出雲市) 体にしみ込むようなお茶を目指して |
焙煎作業を終え、近くの郵便局に行くと顔なじみの局員さんが鼻をくんくんさせて言います。「西さんからほうじ茶のいい香りがしますねぇ。」
春、青々とした新芽に覆われた茶畑は大変美しいものです。大事に大事に育てた茶畑がたまらなく愛おしく、様子を見に行くと言って出かけた父はなかなか帰ってこないことも。その日の作業を終えほっとして、季節によってホタルや赤とんぼが飛ぶ姿を見ると、出雲の豊かな自然の中で生きものと共存しながら茶樹を育てる、そしてそれを原料に一生懸命製茶して、そのお茶を飲んでくださる方がいるということが、本当に幸せなことだと感じます。
私たち西製茶所では、30年前から国産紅茶の製造にも取り組んでいます。作り方の違いによって同じ茶葉が、緑茶にも紅茶にもなります。寒い季節になると、爽やかな香りの「出しゅっさい西しょうが紅茶」がおすすめです。茶葉も、生姜も農薬を使わず栽培されたものを原料にしています。我が家では、これを使ったジンジャーミルクティーも定番です。
“すっと体にしみ込んでくる”、それが私たちが理想とするお茶の姿です。そこに鮮烈さは乏しいかもしれませんが、だからこそ日々の生活に欠かせない、毎日のお茶になると考えています。お茶は薬として端を発し、文化として広まり、今はお茶を囲んでのコミュニケーションや健康を助けるための飲み物としても利用されています。会員の皆様がそれぞれの取り入れ方で、“お茶のある暮らし”を楽しんでいただけたらと願っています。
(西製茶所 西 龍介)